第436話 悲劇

「ミーユが男の名前で何が悪いんだよ!俺は男だ!」

俺の腹に剣を刺したまま、ミーユが兜を投げ捨て叫んでいた。

「どうだ思い知ったか!」

ミーユは声高に叫ぶがライトは青い顔をして周囲に叫びながら周囲の兵士に命じる。

「ミーユ何をしている!誰か取り押さえろ!」


ライトの声にすぐにオットーが気付き、ミーユに射撃を行う。

「おとうさんに何をする!」

「当たりはしない!」

ミーユは剣を引き抜き、オットーの銃弾をかわす。

オットーも避けたミーユより刺されたヨシノブが気になり駆けつける。

「おとうさん!出血が。

ポーションを!」

オットーが手持ちのポーションを振り掛けようとしたが石が飛んできてポーションを破壊する。

「回復などさせるかよ!」

「てめぇ!くそっ!シモ、エーリヒ、ポーションを持ってないか!すぐに持ってきてくれ!」

オットーはミーユの処理よりヨシノブの身を案じる。


「ポーション?・・・おとうさん!!」

少し離れていたエーリッヒとシモも気付き駆けつけるが・・・

「僕のポーションはヘリと一緒に無くなった、シモは持ってる?」

「うにゅ!」

シモは慌てるようにポーションを振り掛ける。

しかし、傷はふさがりきらず、出血を続ける。

「なんでなのよ!」

シモは慌てて手持ちのポーションを全部振り掛ける。

しかし、塞がるのは一時的ですぐに傷が広がりだす。

「くくく、この魔剣ゼットで斬った傷は塞がりはしない。何せ怨念を集めて斬る魔剣だからな。

そいつが怨みを持たれていればいるほど傷は治らない。」

ミーユはライトに押さえつけられながらも高笑いしている。


「にゅ!許さないのよ!」

シモは刀で斬ろうとするも・・・



「シモ!そんな奴はどうでもいい!早くおとうさんを街に連れて帰るぞ!

今エーリヒがショウ兄に救助を求めている。

俺達は少しでも近くまでにおとうさんを連れて行くんだ!」


オットーはそれどころじゃないと呼びかける。

そして、オットーの横ではエーリヒがショウに救助を求めていた。


「うにゅ!オットー急ぐのよ!早く行かないとダメなのよ!」

シモは刀をしまい、ヨシノブを担ぐ。


「お嬢さん、この度は何と言えばいいか・・・」

ライトはミーユを他の兵士に預けて謝罪をしようとするが・・・

「そんなのどうでもいいのよ、急ぐのよ!」

シモは見向きもせずに走り出すのだった。

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