第429話 ルマ・ビザ

「ルマ様、貴方様が前線に出なくても・・・」

翌日、ルマの婚約者イセリが出立するルマを見送りに来た。

「心配するな、私は領民の為に頑張ってくるだけさ。」

ルマは不安そうな表情のイセリに明るい表情で伝える。

別れを惜しむ二人を引き裂くようにナブルがルマの肩に手を置く。


「ルマそろそろ行こうか。」

「ナブル・・・では、イセリ行ってくる。」

「どうか御武運を・・・」

見送るイセリを置いてルマは一軍を率いて出立した。


その頃、ジャブは混乱の度が増しており、住人の一部が街から逃げ出そうと我先に出立していた。

しかし、その多くは行き先もなくただ不安から街から逃げ出しているものが多く・・・

「見捨てる訳にも行かない、すぐに軍をまとめて住人の庇護にあたる。」

ライトは急ぎ軍を集め住人達を追いかける。

行き先の無い住人が難民にならないよう、そして、野盗に襲われないよう、動くのだった。




「ナブル、土煙が見えるな。」

ナブルの示した行き先に従いルマは国境近くまで来ていた。

「あれば・・・ティエラ連邦の者か。

ルマ、君はこれが初陣だろ?後ろに下がっているかい?」

「何を言う!ビザ家の者が敵を前にして後ろに下がるなど出来ん。

ナブル、私の勇姿を見ていてくれ。

皆、我に続け!」

ルマは先頭を切り土煙に突入していく。


しかし、そこにいたのは武装していないジャブから逃げて来た住民達だった。

「と、とまれ!戦闘をやめるんだ!」

ルマは最初こそ初陣の緊張で周りが見えていなかったが何人かと対峙することで兵士で無いことに気づいた。

しかし、怒号が飛び交う中でルマの声は広く届かない。


ルマの命令が届いた時には周囲には非武装の一般人の死体が転がっていた。

「私はなんて事を・・・」

ルマは自分がしてしまった事を嘆いていた。


指揮官の士気の低下は部隊にも広がる。

ルマの嘆きを聞いた兵士達は自分達がしたことに罪悪感を覚える。

不幸にもルマは兵士に愛されていたのである。


そこにライト率いる連邦軍が現れた。


「住民を守れ!ムロ先陣は任せたぞ。」

「ムロ、いっきまーす!」

ムロは白馬にまたがり戦場を駆ける。

ムロの武勇はビザ家にも轟いていた。


「ルマ様お下がりください、ここは我らが引き受けます!」

「ならん!ビザの男が尻尾を巻いて逃げるなど出来ん!

踏みとどまって戦え!」

ルマは勇ましく剣を抜き、周囲を鼓舞するがムロの突撃を止める事は出来ない。


「ナブル!ナブルは何処にいる!」

ルマはムロの突撃に恐怖を覚え、思わずナブルを探すが見当たらない。

そうしているうちにムロが目の前に現れる。

「お前が大将か、名を聞こうか?」

「私はルマ・ビザ!

ムロ、貴殿の強さは知ってはいるが私とてビザ家の男、無駄死になどしない!」

ルマは剣を構えてムロに挑むのだった・・・

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