第370話 二条金星、没落へ

二条金星は途方にくれていた。

陛下に直接言を賜わろうとしたが、陛下は国民に圧をかけることを許されなかった。


しかし、このままでは二条の家は・・・

本来当主の二条金星の屋敷は代々受け継いだ資産と先々代が起こした会社のおかげで裕福な家でもあった。

だが、時代の流れもあり、会社は株式となっていた。

そこを源家に狙われた。親族が持つ株を漁られ、市場にある株を公開買付を行う。

そのために既に資本比率で70%を越えられてしまっている。

週末には役員を総入れ替えするようだった。


「どいつもこいつも裏切りやがって!

源なんぞ、野蛮な一門ではないか。

そのような者に尻尾を振るなど、恥を知れ!」

金星がいかに怒り狂おうと事態は変わらない。

事実上会社は乗っ取られたのだ。


だがそれだけでは終わらなかった。

同じ公家の家である山科から迎えていた妻が離縁を申し出て既に実家に帰ってしまったのだ。

妻曰く、実家に迷惑をかける訳にはいかないとの事で弁護士を通しての離婚手続きをしてきていた。

そして、その際、愛人の事を指摘され多額の慰謝料と財産分与を求められる。

「浮気など漢の甲斐性ではないか、それを今更何を言うか!

そもそも俺達の間に愛などと言うものは無い筈だ!」

「あなた・・・確かに私達は政略結婚ですからね、でも、このような事態になったのです。

さっさと私との関係を終わりにしてくれませんか?」

「くっ、終わりにするのは構わない、だが何だこの額は!私の資産の半分を要求しているではないか!」

「財産分与込ですからね、後は弁護士とお話ください。」

妻はあっさりと電話を切る。

以後はブロックされたのか繋がる事は無かった。


「くそっ!誰か弁護士に連絡を・・・」

金星が声を出すが屋敷から返事が帰ってこない。

屋敷には長年仕えている執事もいるはずなのだが・・・

金星は不審に思いつつ、屋敷内を探すが誰もいなくなっていた。

「どうなっているんだ!」

金星が頭を抱えながら執務室に入ると大量の退職届が机に置かれている。

そこには執事の松本の物もあった。

松本からは源家と争う愚行を責められ、自身の子供や孫の為に辞めることを謝罪する文書で纏められていた。

そして最後にはすぐに源家に謝罪するように書かれていた・・・


「コヤツは忠誠の何たるかも知らんのか!

ワシは退職など認めんぞ!」

金星は感情のまま、退職届を破り捨て、連絡を取ろうとするが連絡がつかない。

その頃松本は既に源家に謝罪に行き、息子夫婦の元に身を寄せていたのだった。


金星は空になった屋敷で一人今後の事を考えるしかなかった・・・

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