第369話 ケーキバイキング

日本で宮木総理が頭を抱えている頃、

俺達は身内でケーキバイキングをしていた。


シモから日本にあるケーキバイキングの話を聞いた、女の子達からのリクエストもあり開催されていた。

ちなみに男の子達はケーキだけと聞き、避けていた為に女の子ばかりの集まりと化していた。


「シモちゃん、見てください。ここはパラダイスです!」

リズの目は輝いていた。

赴任は基地に移住してからの筈なのに、リズは既に屋敷に住み着き、子供達と打ち解けていた。

「リズは子供なのよ、れでぃはお淑やかに・・・ふにゅ!美味しいのよ、フォークが止まらないのよ。」

シモも結局食い気に負けていた。

他の女の子達もシモを笑っていたが実際かなりの量を食べているのが見えた。

だが、女の子達も気を使う相手がいないため、いつもと違う和やかな雰囲気なお茶会となっていたか。


俺はこの光景を見て、しばらく殺伐としていた空気が緩むのを感じた。

アキラが留守の為に騎士団の訓練も中止されており、緊急に行うこともない。

たまにはこんな日もいいかと・・・


「ヨシノブ!今日の稽古はないのか!」

勝手知ったる他人の家、マックスが騒がしく部屋に入ってくる。

「稽古はない、それより騒がしい、今日は女の子達の休養日だからな、お前は帰れ。」

「休養日というなら俺もいていいだろうか?

カルラさんと一日過ごしたいのだが・・・」

「お前がいると女の子が気を使うだろ?

今日は女の子の日だ、後日にしろ。」

「俺に気を使わなくてもいいぞ、それにお前もいるじゃないか?」

「俺とお前じゃ立場が違うだろ?俺は家族だからな、まあ、それでも邪魔なら俺も出ていくが?」

女の子達は首を振っていた。


「そういう事だ、悪いことは言わん、今日は大人しく帰っておけ。」

「うぬぬ・・・」

マックスは悔しそうにしている。

だいぶうち解けている(自称)筈なのにこの溝に違和感を覚えていた。


「おや、今日はケーキが沢山あるね。」

ルクスが部屋に入って来て無造作にケーキをとり、食べ始める。

そして、ごく自然にカルラがお茶をいれ、ルクスに渡す。


それをみたマックスは口をパクパクさせてこっちを見ている。

いや、見るなよ。

「ヨシノブ!ルクス王子が良くて俺が駄目な理由を述べよ!」

「ルクスは俺の家に住んで長いからね、子供達も家族扱いしてるんだよ。

ルクスを王族扱いしてない事は問題なんだけど、本人も認めているから。」

「なら、俺もここに住む!」

「住むな!人の家を何だと思ってる。

それにお前は軍をまとめる立場だろ。」

「軍はここに来るじゃないか!」

「俺の家を軍事拠点にするな、忘れてそうだから言うが他国の領事館扱いだぞ?」

「・・・忘れているわけ無いだろ。」

マックスは視線をそらす、どうやらこの筋肉頭は忘れていたようだった。

俺と話しているとカルラがマックスにもお茶とケーキを持ってきた。


「マックスさん、おとうさんと話すならまずは座ってお話くださいね。

おとうさん、私達は向こうでお喋りしてますね。」

「ありがとうカルラ。ほれ、マックスも座れ。」

そう言うとカルラはみんなの元に帰っていく。

「カルラさん・・・俺のために・・・」

ポワッとしているマックスは立ったまましばらくボーッとしているのだった。

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