第368話 国民の支持

「ヨシノブさん、どういうことですか?」

アズサは混乱しているようだった。

「この穴は元々地球に繋がっていたんだ、それを俺とシモの魔力で固定したら、ここに繋がった。」

「・・・はぁ、そうですね。リョウくんの親友が普通な筈はないですね。」

俺の説明にアズサはため息とともに呆れていた。


「いや、俺は普通・・・」

「普通じゃないです。でも、この穴はこれ以上広がらないのですか?」

「うん、一応少しは拡大出来たんだけど、これ以上は厳しいかな?」

「そうですか、でも、よかった。これで少しの物ならそちらに送れますね。」

「そうなるけど、周りのフチには触らないように。」

「危ないのですか?」

「どうなるかわからないよ。」

「気をつけます。すぐにこの穴周辺に柵を作っておきますね。」

「それがいいけど、少し相談があるんだ。」

「何でしょう?」

「今、政府と少し揉めてるのは知ってるよね。」

「あの布の事ですよね。」

「きっかけの交渉の時に自衛隊を無くしたらどうなると言われててね。

実際、俺の力は自衛隊に登録している物の呼び出しだからね。

消されると呼び出せないかも知れないんだ。」

「確かにありえる話ですね。」

「そこで、この穴を使って、燃料や弾薬の補給は出来ないかな?」

「出来ますね。源家なら弾薬でもご用意出来ますから。」

「いざと言うときはお願いするよ。」

「ええ、ですが、あえて政府とやり合わなくてもいい方法がありますよ。」

「なに?」

「ヨシノブさんの力が日本にいえ国民に支持されれば政府がいらないことが出来なくなるはずです。」

俺の頭にはハテナがついていた。


アズサの計画ではこの穴を使い、パイプを通して、俺の呼出した大型油槽船、YOT−01からガソリンを提供する。

俺の力を使えば油槽船のガソリンは無くなる事はない。

何隻か近くに配置しておけば俺が離れている間も作業出来るだろう。

俺はこの計画に賛同して準備に入る。


しかし、思わぬ副産物があった、油槽船の中身をいじれたのだ、ガソリン、航空燃料、重油、軽油、そして石油・・・

俺はガソリンではなく石油を送ることにしたのだ。


源家では近くの港に石油精製所を建設。

俺の力がある限り枯れることのない油田が日本に出来た事となった。

そして、原価が安くなり、輸送費も大幅にかからない為に国内の石油製品の値下りが始まっていく。

その際、源グループでは俺の存在をアピールして、国が俺に圧力をかければ石油製品の値段に即座に影響が出ると宣伝していた。


そして、一連の話は遅れながら総理の宮木の元に届いた。

「・・・つまりだ、ヨシノブさんに圧をかけた結果、我が国は石油を得たが、今後の交渉材料と信用を失った訳だな。」

「総理申し訳ありません。」

三浦は頭を下げる。

色々検討してギリギリ許容されると思った範囲を攻めたつもりが宮内省の横槍で許容範囲を越えたようだった。


「仕方ない、石油を得た事を良しとしよう。

今後は慎重に交渉するように。

既に我らの信用は無いものと考えた方がいい。」

宮木は頭が痛かった。

確かに石油の高騰に苦慮していたがこのような解決は想定外な上、ヨシノブの機嫌次第で枯れる不安定な油田でもある。

そして枯れた際はその政権が叩かれるのが目に浮かぶようにわかる。

政権にとっての地雷が出来たのだった。


「ヨシノブさんか・・・」

宮木からはため息しか出てこなかった。

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