第366話 川上の居場所
一方川上は居場所がなくなってきていた。
元々、二条金星のお気に入りとしてやりたい放題してきた川上は源家の反撃を受け、金星の権威に陰りが見えたせいで立場を失っていたのだ。
そして、かばってくれる筈の元親王も度重なる失態に不貞腐れている上、新婚生活を楽しんている為に川上の事はどうでもよく、川上に会うことすらしなかった。
ヨシノブに連絡を取ろうにも電話を変えられております、連絡がつかない、各省庁に聞いても今回は知らないの一点張りだった。
そんな中、息子から電話がかかってくる。
「父さん、源家とモメているって本当?」
「なんだナツオ、ちょっと職務的にトラブルになっているだけだ。」
「・・・本当なんで、なんでそんなことになっているのさ。俺の勤め先を忘れたのか!」
息子のナツオは源グループに就職していた。
「いやいや、親の揉め事で息子のお前にまで行くのはおかしいだろ?」
「源グループはそんな甘い会社じゃないんだよ。父さんのせいで退職か窓際への移動を打診されているんだ!」
「そんな馬鹿な事があってたまるか!訴えてやればいいんだ!」
「訴えてどうするのさ、これから源グループと戦って生きていくの?
少々賠償金取れた所で、源家と争っている人の所に嫁は来ないだろうし、次の勤め先すら見つからないに決まっているじゃないか!」
「じゃあ、どうすればいいんだ・・・」
「父さん、源家に謝りに行こう。土下座でもして許してもらうしかないよ。」
「土下座だと、男がそんな真似をできるか!
ちょっと待て、政府を通して苦情を入れてくるから。」
川上は三浦に連絡を取り、源家とヨシノブに苦情を入れようと考えていた。
「ヨシノブさんに苦情ねぇ・・・」
自身の態度を反省せずに苦情を入れようとする姿に三浦は呆れていた。
「そうです、日本人として皇家に尽くすことは誉れと思わなければならないのに、あの者は自身の利益ばかりはかり、挙げ句職務で動く私や息子にまで圧力をかけてくる有り様。
これは許されざる暴挙です!」
「じゃあ、川上さんはどうしたいのかね?」
「まずは私や二条さんに対する嫌がらせをを止めさせます。そのうえで慰謝料請求ですね。
あと輸入も全面的に協力させる必要がありますね。
まずは皇家に差出し、そこから世界に流通させるようにしましょう。」
「・・・どうやってだね?」
「えっ?」
「今回、糸の輸入ですら、圧をかけて行った。
それもヨシノブさんなら許容してくれるだろうと何度も検討を重ねたうえ、出したはなしだったのだ、
実際かなりきわどい交渉だったと思う。
だが、今後、交流を深め、互いの条件を合わせながら輸入品目を増やしていこうという矢先に宮内省の君が関与して、皇家だから差し出せと?君は馬鹿か?
現代の日本でそこまで皇家に忠誠を誓う家があるか?
そもそも皇家への敬意の念が先日の騒動で揺らぐ中、これが世間にバレたらどうするんだ!」
「しかし、ですね、彼は明らかに格下の素材を渡してきて、巫山戯た真似に他ならないと!」
「確かに思うところはあるのは解る、しかし、我々が要求した刃物を通さないという条件はクリアしている。
それ以上の素材を他に渡してはいけないなど、約束していない。」
「三浦さん、日本が舐められているんですよ!ここは自衛隊装備の登録を一時抹消して彼に我々が本気だと伝えるべきです!」
「それは最終手段だ、それにもしそれで変化がなければどうする?」
「えっ?」
「向こうの力は自衛隊の装備を呼び出すということだ。
もし、我々が自衛隊を無くした時でも、彼が呼び出せたらどうする?
そして、源家が自衛隊を名乗り、装備品を登録し始めたらどうなる?
彼の力は不確定すぎるのだ、脅しの道具は一度だけであり、それは今回使ってしまったのだ。」
「しかし、実際にそうなるとは限らないのでは・・・」
「やった結果、敵が増えるだけだろ、彼は住所に爆弾を送ることも出来るし、そもそも源家が黙っていないだろ。
君は政府に源家と戦争しろと言うのかね?」
「そんな、なら私はどうすれば・・・」
「謝罪をするべきだと思う、誠心誠意謝れば彼は許してくれるはず。」
「しかし、糸を手に入れないと私は内親王様から見放されてしまいます。」
「それは仕方ない話だろう、それに宮廷費も近々見直さなければならなくなるだろう。
国民の目が厳しくなって来ているからな。」
「何故ですか、皇家は日本の主です、その方の金銭に触れるなど恐れ多い事を!」
「バブルの時に上げた予算のまま約25年も減額していない、ということが問題なのだ、もし気付かれたら国民が騒ぎ出すぞ。
その間も予算がないと増税し続けているのだからな。」
「ですが、皇家に取って必要な予算です。」
「豪邸を建てたり、婚約者に箔をつけたりすることがか?
国民はバブル以降、苦しい生活をしているものが多い、これ以上誤魔化せない時期が来てしまったのだ。
宮内省の管理も厳しくする必要がある。
君も残るつもりなら、そのつもりで務めることだな。」
「たかが担当大臣の癖に。」
「それを言うなら君はただの職員じゃないか、私に毒づくぐらいならさっさと帰りなさい。
誰かこの客を追い出してくれ。」
警備員が中に入り川上を連れ出す。
川上がいなくなった部屋で三浦は・・・
「皇家に忠誠を尽くすのはいいが、これからどうする気だ?」
結局謝罪を選択しなかった川上がどうするつもりか不思議でならなかった。
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