第364話 日本はいったい
俺はカオリに事情を説明して後日渡すことを約束する。
一ヶ月後無事糸が揃い納品することが出来た、この頃にはレッドスパイダーは亀の上で新たな生活を始め、魔力の多さから少し糸を生成する期間が短くなったそうだ。
カオリ経由でもたらされた布はミラのドレスとなる。
こうなると無二の品とは無くなる上に、格下の布となるドレスをやんごとなき方は着ようとしなかった。
「ヨシノブさん、どういうことですか!」
川上から抗議の電話がかかってくる。
「番号変えたんだけどなぁ。」
「内閣府から聞いたのだ、面倒くさい手間をかけさせおって。」
川上は最初から不機嫌であった。
「それでなんですか?」
「君は何故、最高級の糸を源家やイギリスのクレア家に提供したのか!」
「2つとも縁がありますからね、なぜ提供したことを責められないといけないんですか?」
「そういった物はまず皇家に献上すべき物だろ。」
「いつの時代の話ですか、そもそも俺は政府からの依頼で刃物が通らない糸について用意しただけです。
ブルースパイダーの糸でも効果はあるはずですよ。」
「そんな話じゃない、内親王様に格下にドレスを着せて恥ずかしいとは思わんのか!」
「特に思いませんね。別に何かしてもらった訳でもありませんから。」
「貴様!それでも日本人か!」
「あいにく戦前教育は受けておりません。
法の元に平等じゃないんですか?」
「そんな建前な筈がないであろう。さっさと糸を寄越せ。」
「寄越せとは乱暴ですね、普通は買取りの話ではないんですか?」
「なんだと、だから平民は金金とうるさい、わかったいくらだ。」
「さあ?源家に価値を聞いてみますがかなり高いことは間違い無いと思いますが、支払いは大丈夫ですか?」
「金に困るはずがないだろ、宮廷費から落とすだけだからな。」
「宮廷費ってそんな使い方できるんですか?
そもそも国民の税金でしょ?」
「国民など何に使っているか知るはずが無いだろ、必要経費と銘打てばいいだけだ。」
「贅沢品に税金を当てるなんて・・・」
「税金を使われるのが嫌なら献上すればいいだろ、名誉だけはくれてやる。」
「お断りします。以後宮内省からの直接交渉には応じません。では失礼します。」
「待たんか!」
俺は電話を切り、そのまま政府の窓口である三浦に連絡を入れる。
「三浦さん、先日の糸ですが以後の取引はお断りします。」
「えっ、いきなり何を?」
「宮内省の川上という方から苦情が来ましたが何故番号を変えたのに宮内省が知っているのですか?
交渉窓口は担当大臣である三浦さんのところからですよね?」
「いや、少し待ってほしい、事態が飲み込めていない・・・」
「俺は皇族の贅沢の為に尽くす気なんてないですから、そこの所をご理解願いたい。」
「少し時間をくれないか、事情を把握してから再度連絡をする。」
「いいでしょう、ですが解決するまではこちらが提供するものは何もありません。」
俺は電話を切った。
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