第362話 贈物
俺は日本にいる親友の嫁、アズサに電話をする。
「アズサさん、お久しぶりです。」
「あら、ヨシノブさん、お久しぶりです。主人がお世話になっています。」
「いえいえ、俺も助けられていますからね。
それで今日なんですが、この糸でドレスを作って貰えませんか?」
「あの、それは何の糸でしょうか?」
「レッドスパイダーという、魔物が出す糸ですが、防刃に効果があり、今度日本でも着用する方が出るのですが、その際にちょっとイザコザがありまして、
私としてはそれより最上級の物を他の人に着用してもらいたいのです。」
「つまりその方は最上級ではないと?」
「そうですね、一つ格が落ちる糸ですね、今回の糸はその後に用意出来たものですから。」
「納得しなければ権力にでも逆らうところなんて主人に似てますね。
親友というのがよくわかります。
わかりました、その方がいるパーティに参加者が着用すればいいのですね。」
「ええ、お願いします。」
「これって私のにしてもいいんですか?」
「かまいませんよ、勿論その分は多めに贈るつもりでしたけど。」
「ありがとうございます。楽しみです♪」
「おうおう、人の婚約者に贈物とはどういう了見だ。」
後ろで見ていたリョウが少し笑いながら突っ込んで来た。
「何を言ってるんだか、俺は親友の奥さんに娘を預かって貰っていた礼をしているだけだ。
やましい事なんて無いよ。」
「・・・ふと、思ったんだがその糸。何着分あるんだ?」
「なんと今なら3着分ご用意しております。」
「少ない!もっといるんだ!」
「えー、お前も知ってるだろ。これってかなりレアものだって。
国王が産まれたときに準備して、即位する時に一着出来るかどうからしいぞ。」
「それは聞いた、だけどシモちゃんなら出来るんじゃないかな?」
「娘に無理をさせる気はないなぁ♪
あっ、アズサさん、リナちゃんにも作ってもらえますか?」
「わかりました、私とリナちゃん、リョウくんあと一人は誰にするのかな?」
アズサも俺がイタズラ心満載なのに気付いてリョウをからかいにくる。
「い、いや駄目だろ、何で俺に聞く?」
「楽しそうだから。」
「いい性格で嬉しいよ親友。」
「褒めるなよ、嫁さんが見てるぞ。」
「褒めてない!お前はどうしてそんなイタズラをするんだ!」
「人の善意を疑うやつは一生苦しむぞリョウ。」
「悪意だろ?なぁ、用意できるんだろ、そうだと言ってよヨシノブ。」
「人は同じ過ちを繰り返す・・・」
「繰り返すな!」
「あ、あの、二人とも言い争いはそれぐらいに。」
俺とリョウの会話がヒートアップしていることを心配したのかアズサはなだめようとしてくる。
「あっ、大丈夫、これぐらいは何時もの事だし。」
「アズちゃんヨシノブの言うとおりだ、ただのじゃれ合いだ。」
アズサは電話先で安堵しているが・・・
「じゃあ、あと一人は誰なのか教えてくれるかな?」
電話先にミウとミズホを含めて多数の女の子がいた。
その中にアズサの母親ミズキも混ざっていた。
「何でお母様がいるの!ちょっと恥ずかしいから電話に出ないで。」
アズサが慌てだす。
「でも、レアな素材の服なんでしょ?お母さんもほしいわ。ねえヨシノブさん用意出来ないかしら?」
「ええ、用意させてもらいます。
リョウ相手でしたのでからかってましたが、真面目な話、皆さんの分は用意してあります。」
俺は親友の嫁の母親にまで冗談は出来なかった。
「やっぱりあるんじゃねえか。」
「そりゃ、からかうなら準備は大事だろ?
シモ持ってきて。」
「アズ姉、リナ、みんな久しぶりなのよ♪」
シモの呼び方で誰に世話になっていたかがよくわかった。
「「シモちゃん!」」
特に名前を呼ばれた二人は嬉しそうだった。
「あのね、蜘蛛さんが頑張ってくれたからみんなに贈物するのよ♪
あとね、シモは元気で頑張ってるのよ〜」
シモは嬉しそうに手を振っている。
ちなみにこまめに電話はしているはずなのに、何故か久々に会うような感じの電話であった。
「ヨシノブさん、シモちゃん、贈物ありがとうございます。ドレスの結果は報告しますね。」
当初の予定の嫌がらせを引き受けてくれるようだった。
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