第360話 蜘蛛の糸

「身につけるもので安全対策か・・・

それなら、王侯貴族の服は防刃対策が取られているし、王族なら魔石を利用したアクセサリーだな。」

俺はルクスに聞いて見ると簡単に答えが返ってきた。

「その服そんなにすごいの?」

「普通の騎士の斬撃ぐらいでは斬れんな。」

「それはいい、けど簡単に手に入るのか?」

「蜘蛛の魔物の糸だからな、最上級は高く手に入りにくいが、魔物の格が下がれば安くなるし簡単に手に入る、まあ効果もそれなりになるが、最低でも素人のナイフぐらいなら防げる。」

「ありがとうルクス、手配してみるよ。」


俺はルクスと別れ、ルーカス商会を訪れるとマスが対応してくれた。

「これはヨシノブ様、本日はどのようなご要件ですか?」

「最上級の蜘蛛の糸が欲しいんだがあるかな?」

「最上級と言うとレッドスパイダーになるのですが現在切らしていますね。

あれを入手するのは中々難しくて。」

「そんなに難しいの?」

「ええ、飼育出来る人が少なく、現在では国王が即位する日の為に子供の頃から準備して何とか一着作れるかどうかといった具合です。」

「なら仕方ないか、次にいいのは?」

「イエロースパイダーの糸ですね、これなら2着分あり、次のブルースパイダーなら30着分はあります。」

「問題ないなら全部買わしてもらってもいいかな?」

「勿論です、どうぞお持ち帰りください。」

マスはすぐさま屋敷に送る手配を整えてた。


俺は山本を通し、三浦に連絡を取り付ける。

「糸は手に入りましたよ、最上級の物は無理出したけど、その次のランクですね。」

俺は最上級が手に入らない理由も伝えて、何とか次点の糸を2着分手に入った事を伝えた。


「ありがとうございます。かなりお手数をかけたようで。」

三浦は苦労を察してくれていた。


「加工はそちらで大丈夫ですか?」

「えーと、何か特殊な製法があるのですか?」

「普通の刃物じゃ斬れないから、特殊なハサミがあるらしい、あっ、あと針も専用のがあるって言ってた。それも一緒におくるよ。」

「ありがとうございます、身につける方の好みもありますのでこちらの職人で加工は行います。」

俺は指定された住所に糸と道具一式を送り、このことは終わったつもりになっていた。


「ヨシノブさん、最上級の物を送らないとはどういうことですか?」

知らない番号からかかってきたのに出るとそこには以前にモメた宮内省の川上の姿があった。


「事情は三浦さんに説明したはずですが?」

「まずは自国の皇族に用意すべきでしょう、何とかして手に入れることを内親王様はお望みである。」

「陛下じゃなくて内親王かよ・・・そもそも、前は元内親王とか言ってたよな、今回も元なのか?」

「元とかは無い、内親王様は何があっても内親王だ、お前は日本人として次期天皇の姉を蔑ろにするつもりか!」

「俺はもう日本人じゃないからね、交渉なら政府を通してください。

担当大臣も出来たんでしょ?」

「あいつらはいかん!皇族の何たるかもわからず、支持率ばかり気にしておる!いわれなき誹謗中傷に踊らされおって!」

「俺も皇族の何たるかは知らないので、協力する気になれません。では、失礼。」

「なんだと!」

俺は怒り狂う川上の電話を切り、そのまま別の携帯を呼び出し、番号を変えるのだった。

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