第354話 爺さんのいない平和な日

ショウはアキラを連れて大海原に向かって船を出していった。


屋敷にはアキラがいない事で平和な日常が取り戻されていた。

「訓練がないとこんなにも身体が楽なのか。」

衰えないようにトレーニングはするがそれでも身体が楽であった。

「おとうさんタオルです。」

一汗かいたあと、子供のチャムがタオルを持ってきてくれた。

「チャムありがとう、そういえばチャムがタオルを持ってきてくれるのは珍しいね、いつもはショウくんにベッタリだったから。」

「そ、そんなことないです、ただおとうさんはいつも他の人が先にもって行くし、ショウ兄はミキ姉が渡さないと誰も渡さないから私ぐらい渡してあげないとだし。」

「まあまあ、でも、ショウくんについて行かなかったのかい?」

「・・・うん、最近ミキ姉がショウくんへの距離が近いって怒るの。」

「あらら、嫉妬されてるのかな?」

「うー、取ったりしないのに。」

「ショウくんもモテるからミキさんも警戒しているんだよ。

最近、子供達の中でも恋愛に目覚めている子がいるんだろ?」

「恋愛ですか?あまりいないと思いますよ?」

「だって、オットーやパウルを見つめている子を見かけるよ。」

「ふにゃ!そ、それはで、で、ですね・・・」

「うん?そんなに動揺しなくてもいいよ、オットーやパウルは格好いいからね。

モテるのもわかるし。」

「そ、そんなんじゃなくて、で、でも、言えなくて!」

「あはは、照れなくてもいいよ、それでチャムは誰に興味があるのかな?」

「チャムの興味ですか?」

「うん、折角だから聞いておこうかな?

ほら、いいなっていう人とかいないの?」


チャムは悩む、ヨシノブの言葉だから正直に答えたい。

そして、口から出てきた言葉は・・・

「チャムはショウ兄✕ビルバインさんです。」

「ショウくんと、ビルバインって近衛騎士団長になった人?結構年上だよね。」

「ええ、でも、年下のショウ兄がビルバインさんにのって・・・はっ!なんでもないです!」

チャムはしまった!という表情を浮かべて口を押さえる。


「うん?よくわからないんだけど、ショウくんが何?」

「わ、忘れてください!わ、私はこれで失礼しまふ!」

チャムは慌てるように俺から離れていった。

俺にはよくわからない事が残っただけだった。


緊急乙女会議が開催される。

「チャム、あなたは乙女条約に違反する気ですか。」

「す、すみません、カエデ議長。興味のある人を聞かれて、つい推しの話を・・・」

「推しの話は同志のみの話です。

よりにもよってヨシノブさんにするなんて・・・」

「で、でも、おとうさんは気付いて無さそうでしたよ。」

「それでもです、活動を止められたらどうするのですか!」

「はぅ!」

「あなたのした事は同志達の夢を狩る行為です。

あなたの反省が認められるまで、あなたの掛け算は封印します。」

「そ、それだけは!せめて新刊の停止だけで!」

「なりません、それだけの危険性があったのです。

みなさん、いいですか、どんな場合でも男性に知られてはいけません。」

「「「はい!」」」

乙女の会は秘密を異性に漏らしてはいけないのだった。

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