第348話 マルドラド王国にタクミを送ると
俺はタクミ、タスクを連れてマルドラド王国にやって来ていた。
「おお、ヨシノブ、戻って来てくれたか。」
カーム王が出迎えてくれる。
「カームさん、お久しぶりです。
こちらが復興の指揮を取るタクミとその補佐のタスクです。」
俺は二人を紹介すると共に二人も挨拶を済ませる。
「ヨシノブが指揮を取るのではないのか?」
「一応他国の王だから、緊急事態以外で土木作業を直接行うなって釘を差されているんです。」
「しかし、そなたの力ならすぐに元通りになるのでは?」
「俺の力も万能ではないので、畑は無理ですね、更地だけならそれなりの時間で出来そうですが。」
「そうなのか?」
「はい、ですが完全に何も出来ない訳ではないのですがそれは俺がやる必要も無いのでこのタクミが行うのです。」
俺はここに連れてくる前にタクミとタスクに重機の操作を叩き込んでいた。
副官にすればすぐに使えるが、タクミとタスクをそこまで信用していない。
各種重機の基本操作を教え、あとは使って覚えてもらうだけだった。
そして、多くの人員はルーカス商会に手配させた人足達とルーカス商会のお抱えで信用出来る警備員を二人の護衛に充分なだけ用意していた。
俺は臨時基地に物資と燃料を補給したら帰るつもりだった。
「待てヨシノブ、まさかそのまま帰るつもりか?」
「えっ、はいそのつもりですけど。」
「国を救ってもらって祝宴の一つもしないでは私の面子が立たない。
どうか暫し滞在してくれないか?」
「お気持ちはありがたいのですが、今は妻が身重でして、なるべく側にいたいのです。」
その言葉にカームは残念に思う、ルイスが先に子を産むということが無くなったのだ。
ルイスの歳を考えれば仕方のない事ではあったのだが、もしこれが男子なら跡継ぎになるだろう。
そう考えると少し表情に出てしまったのも仕方のない事だった。
しかし、上役の顔色を伺うことに長けている貴族はどこにでもいるもので・・・
「ヨシノブ殿、陛下のお誘いを側室の身重を理由に断るとはいささか失礼にございませんか?」
カームの機嫌を取るためにいらない事を言ってしまう。
その上、残念な表情を祝宴を断られたせいだと思い込んでいるのだった。
「よさぬか!」
カームは慌てて止める、しかし、一度放たれた言葉は消えることはない。
「そちらこそ失礼ですね、私の妻はサリナだけですし、家族の心配をして何が悪い。」
俺はサリナを側室扱いされた事、そして、身重のサリナを心配する俺の気持ちを考慮していない発言に不機嫌になる。
「なっ!貴殿はルイス様をないがしろにするつもりか!」
「ないがしろと言われても、ルイスさんはまだ子供、結婚の話をするにはまだ早い。」
「止めろといっておる、下がれ!」
カームは文句を言う貴族を下げるが雰囲気は最悪な物だった。
「カームさん、俺はこのまま帰りますが、残る者に危害が加えられるようなら、即座に応戦させてもらいます。
ロンメル、悪いが戦車隊で臨時基地の警備をしてくれないか。」
「はい!事あらば、周囲を更地に変えてみせます。」
「その判断はロンメルに任せる。ただし、被害が出るようなら即座に撤退するうに。
ブルーノも帰還の足として残ってくれないか?」
俺は臨時基地にロンメル率いる戦車隊とブルーノ率いる航空隊を配備、そして、輸送機を置いていくので何時でも撤退出来る備えをしていた。
「ヨシノブ、すまない。
どうか謝罪の機会をくれないだろうか?」
「カームさん、一度ご自身の家臣を纏めて下さい。
こう何度も不愉快な気分にさせられるのは許容出来ません。
私は暫くはこちらに来ません。」
俺はそう告げ、マルドラド王国をあとにした。
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