第349話 新たな居場所

マインズ王国に帰った俺はあらためて自分の領地を持つことを考える。

現在、マインズ王国に避難してから滞在しているのだが、いつまでも世話になる訳にはいかない上、貴族との揉め事もある。

俺は事前に調べていた無人島の開発を行うべく動きだす。


島はマインズ王国の王都から高速艇で2時間後の位置にある小さな島だ。

このままだと、住むのは難しいがこの辺りは広く浅瀬となっており、少しの埋め立てで陸地に変えることが出来る。


俺は浅瀬一帯を埋め立て、深さのある所には軍港と一般用の港を作り、フロート式の空港も作った。

浅瀬一帯を埋め立てるとかなりの広さとなり、充分一つの街ほどの大きさになったのでここに大掛かりな基地を建設する。

前回の奇襲を受けた反省から、各種観測所および防衛網を構築した。

帝国海軍に奇襲を受けても応戦出来るだけの力を用意した。


「なに?屋敷を引き払うとな?」

俺はルーズに報告する。

「はい、無人島を開発して自分の領地を持とうと思います。」

「それなら屋敷は我が国との領事館としてそのまま使いなさい。

こちらに来た時に滞在する場所も必要であろう。」

「よろしいのですか?それならば領事館として使わさせてもらいます。」

「うむ、しかし、寂しくなるのぅ。」

ルーズが寂しがる中、リーナが部屋に入ってくる。

「お父様、こちらからもヨシノブさんの所に領事館を出しましょう。」

「リーナ、盗み聞きは良くないぞ。」

ルーズはたしなめながらも提案を考える。


「そうじゃのぅ、互いの窓口として領事館を出すべきか、ヨシノブどうであろうか?」

ルーズは対等な関係としてもお互いに領事館を設置するのは名案に思えた。

「いいですよ、建物はこちらで用意しておきます。

ただ、人選には気をつけていただきたい。」

俺は先日からの事があるのでこちらを見下さない人の派遣を要望する。


「それなら大丈夫です!リーナが行きます♪」

リーナは嬉しそうに手を挙げる。

「リーナは駄目じゃ。」

しかし、あっさりとルーズは却下する。

「なぜですか!リーナが思いついたんですからリーナが行くべきですよ。」

「なぜか?それはお前がまだ子供だからじゃ。」

「あうぅぅぅ・・・」

リーナは机にうつ伏せになる。

「それなら私が行くべき。」

今度はリズが部屋に入ってきて志願する。

「リズ姉さまずるいです!リーナの思いつきを取る気ですか!」

「子供のリーナは無理とお父様がおっしゃったはず、でも、私ならもう公務も出来る。」

「リズか・・・ふむ、悪くないのぅ。」

先日のリズのやらかしで婚約が無くなってしまった。

ある意味、事故物件なリズだが、ヨシノブの近くに置けばチャンスがあるかも知れん。

「リズ姉さまはズルっこです!卑怯なズルっこです!」

リーナはリズに駄々をこねている。

「リーナ静かにしなさい。リズ領事として職務につくかい?」

「任せて、完璧にこなして見せる。」

リズが意気込んでいる。

「ヨシノブよ、リズを任せても構わんか?」

「ええ、見知った方ですので、心配無いですね。

子供達とも仲良くしてくれてますので。」

リズは屋敷に来た時、子供達と一緒に遊び、お菓子を食べたりしていた。

その為に打ち解けており、今更問題が起きるとは思えなかった。

「ならば、決まりじゃ。

リズよ、領事としてヨシノブに同行せよ。

くれぐれも恥ずかしい真似はするでないぞ。」

ルーズの命令を受けてリズは領事となるが、その後ろでリーナがホッペタを膨らませふてくされていたのだった。

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