第344話 謝罪を・・・

サリナが子供達と庭を散歩中に訪ねて来た。

「あの、先日は申し訳ありません。

タスクとその妹ウルルと申します。

シモ様に失礼な言葉を吐いてしまった事を謝罪に参りました。

どうか、ヨシノブ様に面会していただくことは出来ないでしょうか?」

「主人なら部屋にいますので伺ってきますね。

カルラ、この方を客室に通してあげて。」

「おかあさん、セキュリティの事があるから、簡単に人を信用しないでよ。」

「大丈夫よ、オットーくんもここにいるのだから。」

サリナはオットーの頭を撫でる。

「お、おかあさん、恥ずかしいよ。でも大丈夫、ちゃんと護衛は出来てるから。」

オットーはいつでも銃を抜く準備をしつつ、様子を伺っている。

「リミはおとうさんに客が来た事を伝えてくれるかな?」

「わかったから、絶対に走っちゃ駄目だからね。」

リミは念を押しつつ、ヨシノブに伝える為に走っていった。


「タスクが来た?ウルル?って誰?」

俺は来客の名前に覚えがなく首をかしげる。


「恐れながら、タスクと言うと先日ウイン殿下の護衛としてこの屋敷を訪れて、シモお嬢様に失礼な言を吐き、手を切られた者にございます。」

アドラーが答えてくれる。

アドラーは先日の一件から、屋敷の使用人として雑務をこなしていた。

彼は人の嫌がることを進んで行い、自らの反省を示しており、評判は悪くなく、今はタスクの取次で俺の元に来ていた。


「あー、そういえば、騎士団の訓練の切っ掛けになった人か、何のようだろう?」

「差し当たり、居場所がなく謝罪に来たと思われますが、お合いになりますか?」

「せっかく来てるみたいだから合うよ、通してもらえる?」

「かしこまりました。」


アドラーはタスクを連れて戻ってきた。

「この度は面会を許していただき感謝いたします。」

まず挨拶をしてきたのはウルルだった。

「えーと、君は?」

「タスクの妹のウルルと申します。先日兄様が失礼致した。

兄様も反省している次第で、本日は謝罪に参りました。

・・・ほら、兄様。」

タスクはウルルに促され、謝罪を行う。


「えー、先日は申し訳な・・・ありません。

自らの言が誤っておりました。」

「わかった、謝罪は受け入れるよ。

君も罰は受けているようだし。」

俺はアキラに斬られた手を見ていた。

謝罪は受け入れたものの、次の言葉が始まらない。

しびれを切らしたのか、ウルルが声を上げる。

「あ、あの!ここに来たのはもう一つお願いがありまして!」

「何かな?」

「兄様にどうか仕事を紹介してもらえませんか?」

「・・・悪いけど、そこまでする義理は無いと思うけど?」

「どうかお願いします。

今回の一件で何処も相手をしてくれないうえ、兄様は父様から家も追放されてしまったのです。

どうか切にお願いします。」

ウルルは地面に頭をつけて懇願してくる。


「まずは頭を上げてくれ、それじゃ話が出来ない。」

俺はウルルに頭を上げるように言うとウルルは頭を上げるが床に座り込んだままだった。

「兄の為とはいえ、君がそこまでする必要はないだろ?」

「兄様は、居場所の無かった私の為に居場所を作ってくれたんです。

その恩を返す為なら頭の一つや二つ下げる事に躊躇いなんてありません。」

ウルルは真剣な瞳を俺に向けて来ていた。


「はぁ、わかった、職を紹介しよう、ただし、キツい仕事かも知れんぞ。」

「ありがとうございます!兄様も頭を下げて!」

「ああ、ありがとうございます。」

タスクも言われるままに頭を下げる。


「まず君にはマルドラド王国の復興の手伝いをしてもらう。

代表は別の人がやるからその補佐だな、代表は常識に欠けるから君の感覚で助言をしてくれ。」

「使節団の補佐ですか!」

「あー、そういう事になるね。向こうと揉め事を起こさないように気をつけてくれ。

なにか問題を起こせば斬り捨てるからな。」

「わ、わかりました。」

「それが済んだら、結果次第で別の仕事を与えるから、くれぐれも手を抜かないように。」

「ありがとうございます!このような高待遇、粉骨砕身、働かせていただきます!」

タスクの目にやる気が満ちてきていた。


「あ、あの、そのような高待遇で良いのですか?」

ウルルは頼んだものの心配になっていた。


「君の兄妹愛に免じてだよ。

俺にも妹がいるから・・・バカな兄の世話をする大変さは、他人事じゃなくて。」

「バカな兄なんて、ヨシノブ様の妹様はそのような事を思っておられぬ筈です。」

「いやいや、充分迷惑かけてきたからね。

ウルルさんはこれからも兄さんを支えてあげてね。」

「はい!兄様をよろしくお願いします。」

ウルルは嬉しそうに頭を下げるのだった。

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