第342話 タスク
捕縛されて檻に収監されていたタスクは解放後、近衛騎士団に顔を出す。
今後についての話し合いが行われるはずだったのだが、詰め所に来ても見知った顔が誰もいなかった。
「どうなっているんだ?」
タスクは困惑しながらも近衛騎士団長室をたずねる。
「君がタスクかね?」
タスクが中に入ると知らない男がいた。
「私はタスクですが、あなたは誰ですか?」
「私は新たな近衛騎士団長に任命されたビルバインだ。
よろしくと言いたいが顔を合わせることはほとんどないだろう。」
「えっ?団長がかわったのですか?ライオネル団長は?」
「彼は諸事情で退役なされた。」
前団長ライオネルはアキラの訓練により、心が折られ、引き籠もりになってしまった為に退役を余儀なくされていた。
「諸事情ってなんですか!」
「君が知る必要はない、そして、君の今後だが・・・妥当な所では退役かな。」
「退役ですって!たしかに手を失いはしましたが近衛騎士なら内務に転属が出来る筈ですよね。」
「君が檻から出て来れているのは君の実家の力なだけで、君の失態が無くなった訳ではない。」
タスクは侯爵家の次男であり、その権力から檻から釈放されてはいるのだが・・・
「私はウイン王子に毒味を薦めただけです!
それは罪なのですか!」
「その後のイザコザを起こしたのが罪だ。
だが、利き手を失った事もかんがみ、釈放されたところもあるが・・・
選ぶといい、第七兵団の1兵士としてなら席があるが、どうする?」
「兵士とはなんですか!しかも第七兵団なんか辺境じゃないですか!」
第七兵団は南の蛮族との国境の防衛を行っている軍であり、あまりの辺境の為に王都の騎士団からは左遷扱いされていた。
「ならば、君に居場所はない。」
ビルバインはあっさりと言う。
「なぜですか・・・そりゃ近衛に残るのは無理でも、他の騎士団への転属だってできるでしょう!」
「君が引き起こした騒動のせいで近衛だけでなく他の騎士団もかなり迷惑を被っている。
何処も君の引き取りを拒否した。」
「なっ!」
「君は知らないだろうが、君のしたことは騎士団員達を地獄に送り込むことだったのだ。
たとえ騎士団に入れたとしても、君はろくな目に合わないのは間違いないだろう。」
「たかが子供に失礼な言葉をかけただけですよ!
それに罰なら手を失った事で受けている筈です。」
「そうではないのだよ・・・
今、恨みから君を殺したい程憎む者は多くいる。
私としては辺境に逃げたほうが君の為になると思うが・・・」
「受け入れられません!」
「なら、話は終わりだ。君の除隊は今時点で決まった。
今後、君の身の保証は近衛騎士団で行わない。 さあ、出ていってくれ。」
ビルバインは言葉を終える。
しかし、まだタスクは粘ろうとするが、会話をすることなく、騎士に叩き出される。
「二度と来るんじゃねえぞ!」
叩き出された騎士にツバを吐きかけられる。
「何故、これほどまでに、恨まれているのか・・・」
タスクに答えが見出だせなかったが一先ずは実家に帰るのだった・・・
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