第341話 意識改革

「いてぇなぁ・・・オットー、パウル無事か?」

俺は二人の子供の身を案じる。

「僕達は大丈夫です。おとうさんもケガは無いですか?」

「俺も大丈夫だ・・・おや、何かテラスが騒がしい、ちょっと行ってくるよ。」

俺は騒動が起きているテラスに向かって走っていく。

「待ってください。、おとうさん!僕達も行きます!」

俺に続くようにオットー、パウルも走り出す。

リョウは完全にのびており、ローザが手当に走っているのがみえた。


「何かあったのかい?」

俺はテラスに上がり、サリナに聞く。

サリナは大丈夫、全て終わりましたと伝えてくるが、ルーズが謝罪と共に事情を教えてくれた。


「なるほど、サリナが許しているならこれ以上は問わない。アドナーさんは運が良かったね。

サリナに傷一つでもついていたら、今頃その首はついてなかったよ。」

「誠に申し訳ない。」

アドナーは深く頭を下げる。


「まあ、アキラさんの強さに憧れを持つ気持ちはわかるけど、この子はアキラさんの次に強い子だからね。

今度、立ち会ってみるといい。」

「ありがとうございます。

シモ様、是非あなたの剣技をお見せしていただきたく思います。」

アドナーはシモに負けた事でシモの発言が嘘でない事を理解していた。

その結果、シモにも多大な敬意を示していた。


「ヨシノブ、本当にすまない。」

ルーズはあらためて謝罪する。

「ルーズさん、一度近辺の見直しをしたほうが良いかと。

少々命令違反が多いのでは?」

「うむ、引き締めねばならんと考えておる。

人を見下すような者が権力を持たぬようにせぬばならん。」

ルーズの目からは決意が感じ取れた。


「あー、それから俺の方からも謝罪します。」

「ヨシノブから謝罪する事があったか?」

「2つの騎士団を潰してしまいましたから・・・」

俺は倒れたまま、動いていない第四騎士団と近衛騎士団を指差した。


「訓練の結果だから謝罪の必要は無いが、あれはどういう状態なのだ?」

「たぶんですが、全員骨が折れてます。

まあ、骨はポーションで治せますが、何割かは心が折れているかと・・・」

俺は言いにくそうに伝える。


アキラとの戦闘は心の弱いものは心を砕かれる。

エリートを鼻にかけていた近衛騎士達は現在うずくまり、幼児退行を引き起こす者、ブツブツと虚無に話かけている者、発狂している者など再起不能と思われる者が多数いた。


第四騎士団は近衛騎士よりはマシであったものの、恐怖にとらわれる者が多くおり、暫くは使い物にならないだろうと思われた。


しかし、訓練を終えて変わった者もいた。

恐怖を乗り越えた者達だった。

彼らは以後驕ることなく、身分に関わらず平等に接するようになる。

我欲に走る貴族に怯む事なく罪を罰し、平民を命懸けで守る、本当の騎士に生まれ変わったのである。


彼らの中に一つだけの誓いがあった。

二度とこのアキラの前に立つことをしないと・・・

そして、詰め所に標語が掲げられる。

『驕るな、誓いを破れば、悪魔はすぐ側に来る。』

立ち直った騎士達は誓いを破ることなく、新人にも徹底した教育を行い。

驕ることない、騎士団が完成するのである。

ただ一心に地獄に落ちたくない、それだけの為に・・・

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