第332話 リズの婚約者
「仕方ないですね、少しだけですよ。」
俺はリミを呼び、ケーキを持ってこさせようとするが・・・
バン!
扉が勢いよく開かれる。
「リズ!君という人は僕というものが有りながら、他の男に色目を使うなんて!」
既に縛られている男が倒れ込むように扉から入ってきた。
「え、えーと、あなたは?」
「僕はガイラ、侯爵家当主だ!」
「なんで縛られているんですか?」
「屋敷に入ろうとしたら縛られたんだ、早くとけ!」
「うるさいゴミだ、おとうさん、捨てて来ていいでしょうか?」
オットーの銃口はガイラの頭に向いている。
「待てオットー、縄を解いてあげて。」
「おとうさんが言うなら仕方ありませんが、コイツ制止を聞かずに屋敷に突入して来た不審者ですよ。」
「それでもマインズ王国と争いたくない。ガイラ侯爵の話を伺うよ。」
オットーは渋々縄を解く。
「くっ、これほどの屈辱を味わったのは初めてだ。」
「なら、忘れさせてあげてもいいですよ、永久に思い出すことも出来なく、考えることすら出来なくなりますが。」
ガイラの言葉にオットーが脅しをかける。
「オットーやめなさい、ガイラ侯爵もいきなり押しかけるとはどういうことか説明してもらってもいいですか?」
「・・・非礼は詫びよう、だが僕の婚約者リズ王女を屋敷に連れ込むのはどうかと思うのだが。」
ガイラは俺を睨む。
「俺は連れ込んだ覚えはない。彼女が勝手に来ただけだ。」
「そんな話を信じられるか!彼女は僕以外の男と話している姿を見たことが無い。
君はどんな手段を用いてリズ王女を誑かしたのだ!」
「どんな手段と言っても・・・餌付け?」
俺はリズが食べているケーキを見る。
この状況でもカミラが持ってきたケーキをリーナと二人で幸せそうに食べていた。
「リズさん、ちょっと説明してくださいよ。
あなたのせいで婚約者さんに絡まれているんですから。」
「婚約者・・・?あっ、お父様が言ってたガメラ侯爵?」
リズはガイラを認識もしてなかった。
「リズねえさま、ガイラさんですよ、この前アメをくれたじゃないですか。」
リーナは覚えていたようでリズに耳打ちするが声が大きくて周囲にも聞こえていた。
「・・・あーーー、思い出しました。ハッカ飴をくれた方でした。
私、あれ苦手なんです。」
「リズねえさま、正直に言っちゃだめです。
おとうさまも言ってましたよ。
王族は不満を表に出してはいけないと。」
「さすがリーナ賢く育っている。」
リズは納得したようだが、ガイラのキズは深い。
「あ、あの〜ガイラ侯爵、リズさんもまだ子供ですし、それほど深くとらなくても・・・」
俺はかける声が見つからない中、言葉を選びつつガイラに声をかける。
「君に僕の気持ちがわかると言うのかい!」
鼻水垂らして号泣しているガイラに俺は引き気味になるが、リズへの一方通行の好意には同情できるものがあり、俺も反論できなかった。
「僕はこの3年間彼女に尽くしてきた筈だ、彼女が美食家と聞いて王都の有名店は全てチェックしてあるし、贈り物も最高に美味しい物を用意してきた。
なのに、名前すら覚えられていないなんて・・・」
報われない想いと、地面に両腕を着いて、号泣している様は同情に値した。
この場にいた騎士団長達も声をかけることが出来ず、いたたまれない空気が流れるのだった・・・
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