第265話 新勇者タクミ

異世界に来たタクミは当初は楽しんでいた。

「ゴブリン発見♪」

歩兵銃で頭を撃ち抜く。

「当たるもんだな、もしかして才能あるかも。」

タクミの弾が当たるのは神に強化された力のせいだった。


「きゃぁぁぁぁーー!」

森の奥から悲鳴が聞こえてくる。

「もしかしてテンプレか♪」

タクミはお約束のテンプレを期待して声の方に向かうと・・・

テンプレのイベント、貴族の馬車が盗賊に襲われ、護衛は既にやられており、お嬢様が襲われそうになっていた。


「きたきた!これだよこれ!」

「誰だ!」

騒いでいるタクミに盗賊が振り返る。

「か弱き婦女子を襲う外道に名乗る名など無い!

見よ!このタクミの力を!」

「なんだ、てめぇ!名乗ってるじゃねえか!

おい、このふざけた奴をやっちまえ!」

「あっ!ちょ、ちょい今の無し!」

「うるせぇ!俺たちの邪魔をするなら関係ない!悪いが大人しくしてもらうぞ!」

「くそっ、かっこ悪いなぁ、だが!俺に勝てると思うな・・・あれ?」

タクミの腹には後ろから剣が刺さっていた。


「なんだ、弱いじゃ無いか。」

盗賊の仲間がタクミを後ろから刺したのだった。

「こ、こんなはずじゃ・・・」

タクミの意識は失われていく。


「さて、お前の親父に拐われた娘を返してもらうための人質になってもらう。」

「離しなさい、この平民が!」

「うるせぇ!こっちも限界なんだよ、お前ら領主に嫁や娘を拐われ、奴隷として売り飛ばしやがって!」

「平民の事をどうしようと貴族の勝手でしょう!それより私を早く解放しなさい、そうすれば、一族郎党皆殺しは勘弁して差し上げます。」

「捕まってその威勢はたいしたものだ、だが、残念だな、ここにいる奴等は全員家族はいねぇよ、領主に拐われた者以外はな!」


「くそったれ!なぁもうコイツ殺しちまおうぜ。

俺は我慢できねぇよ!」

「まて!まだ、売られてない者もいるはずだ、憎いのは同じだが、まだ我慢してくれ!」


盗賊と見られた男達は、この貴族の娘の親の領民で、税の代わりに家族を拐われた者達だった。

その税も他領と比べ、かなり高い水準となっており、領民達は生きるか死ぬかの瀬戸際の暮らしを余儀なくされていた。


「私を殺すとは何と無礼な者達でしょう。

恥を知るなら、今すぐ命をたちなさい!」

この状況でも悪態がつけるこの娘はある意味たくましかった・・・


「もういいか・・・やっちまおうぜ。」

男の一人が言った。

「落ち着け、まずは縛りあげて・・・ってなんだ!」

死んだ筈のタクミが立ち上がっていた。


「がはっ、よ、よぐも、俺を刺しだなぁ・・・」

フラつきながらも男に近付いてくる。


「なんなんだ、こいつは!早くもアンデッドになりやがったのか!」

「気にするな、手足を切り落してしまえ!」

男達は斬りかかるが・・・


その前に歩兵銃を乱射し始める。

「ぎゃははは・・・くだばれ!おろがものどもがぁぁぁぁぁぁ!」

「ぐわぁぁぁ!」

男達は乱射される銃弾に倒れていく。


その光景に貴族の女も恐怖を覚えるのだった。


男が全滅した後、タクミは女に近付く、その頃には身体は完全に回復しているのだった。


「お嬢さん、怪我はないですか?」

「ヒィィィ・・こ、来ないでください。」

女は腰が抜けながらも後ろに後ずさる。

「いや、俺は君を助けて・・・」

「こ、こないで!化け物!」

「誰が化け物だ!」

ガチャ、バン!

タクミは感情のまま、女を撃ち殺す。


「ひゃははは・・・って、なんだこれは・・・」

タクミは自身の行動がわからない。

何故俺は今、目の前の女を撃ち殺したのだ?

なのになんでこんなに高揚しているんだ?


答えがわからないまま、脳裏に浮かぶのはアキラを殺せという命令だった・・・

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