第264話 新たな拠点

俺達は城を後にして、用意してくれている屋敷に向かった。

そこは郊外だが海に面しており、船を使う俺に対して配慮が見られていた。


「さすがルーズ王だね、気遣いが上手い。」

屋敷は広く、子供が多い俺達が収容出来る程だった。

「どうだ、ヨシノブ驚いたか?」

ルクスは誇らしげにしている。

「見事だね、でもよくこんなに屋敷があいていたね。」

「何を言う、これはお前が滞在するための屋敷だ、ちゃんと新築だぞ。」

「はい?なんで作っているの?」

「いつでも滞在出来るようにと、俺達は敵対するつもりがない証かな?

まあ、一番は感謝の気持ちだ。

快く受け取ってほしい。」

「ありがとう、おかげで助かっているよ。

でも、お礼に何をしたらいいんだろう?」


「・・・本当はお礼なんていらないと言うのが俺達の意見だったんだけど、出来れば、出来ればでいいから、以前もらった化粧品を貰えないだろうか?」

「化粧品?構わないけど、そんなのでいいのか?それにいくつかは贈っているよね?」

「いや、実は、数が足りてないんだ、母上が友人に自慢するのに使ってて、つい渡したそうなんだ。

それで、貰わないと俺達には折檻が待っているんだ。」


「折檻って、誰が?」

「母上だ。」

「イルーゼさんが?あんなに優しそうだったのに?」

俺の目からしたら優しそうな母親に見えたのだが・・・


「お前は知らないからだよ、父上も母上には頭が上がらないしな。」

「見えないなぁ〜」


「まあ、それはいい、化粧品を出してくれるよな?」

「なんだろ?そう言われると出したくなくなるのは不思議だよね。」

俺の中でイタズラ心が湧き上がる。


「やかましい!それは俺に対する嫌がらせじゃないか!」

「やだな、ただのジョークだよ、これをリーナちゃんに渡せばいいんだね。」

俺は化粧品をルクスに見せる。

「なんでリーナになんだよ、俺がここにいるんだから渡せば済む話だろ?」

「リーナちゃんから渡せばリーナちゃんが褒められるだろ?」

「代わりに俺は叱られるがな。」


「親子の会話を楽しめよ。」

「お前の化粧品を持って行って楽しむよ。」

俺達にこやかには笑い合っていた。


「よこせ!」

「やだね!」

強行に出たルクスをかわす。

「ぬっ!動きが早い!」 

「ちゃんと訓練してるからな、容易く捕まりはしない。」

「無駄な事を!」

俺とルクスは室内で走り回るのだった。


「ヨシノブさん!何してるんですか!」

走り回っていると部屋に来たサリナが俺を叱る。

「もう!ルクスさんをからかい過ぎです。

ほら、化粧品を渡して。」

「はーい、仕方ないなぁ、ホイ、ルクス。」

俺は軽く投げて渡す。

「あぶねぇ!」

投げられると思って無かったのか、慌てて落としそうになる。


「ナイスキャッチ♪」

「割れたらどうするんだよ!」

「ルクスがイルーゼさんに叱られる。」

「ほう!そんな事を言うやつはこうだ!」

ルクスは俺に関節技をかけてきた。

「痛いいたい!ギブ、ギブ!」

「やかましい、少しは痛い目にあえ!」

「のー、サリナ、ヘルプ!」

「知りません、もう好きなだけ、遊んでてください。」

サリナは呆れたようにこちらを見て部屋から出ていった。


結局、互いのじゃれ合いはサリナが去ってからも続けていたのだった。

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