第263話 退却の先は

「サリナ、これよりマインズ王国にいくよ。」

俺はおうりゅうで海中を進みながら、みんなと合流する。


「ヨシノブさん!無事だったんですね。

こんごうが沈んだから心配したんですよ!」

「あーごめん、連絡しとけばよかったね、こんごうを盾にして、今は潜水艦で海中を航行中なんだ。」

「いいんです、無事なら・・・」

「それより、ルクスに代わってもらえる?」

「わかりました、ルクス様、ヨシノブさんが呼んでます。」

サリナはいずもに乗艦していたルクスを呼ぶ。


「ヨシノブ!無事だったか!」

「なんとかね、マインズ王国に逃げる事にしたけど、受け入れてもらえるかな?」

「当然だ、たとえ父が反対したとしても、俺の領地にくればいい。

まあ、父が反対するとは思えんけどな。」

「すまない、世話になるよ。」

「なに、俺達の方が世話になっているからな、それよりアレは何なんだ?ヨシノブの艦の強さは最強と思っていたが・・・」

「あの船は俺達の世界の戦艦だね、大和と同じ時代に作られた船だ。」

「つまりアレに乗っているのは?」

「日本人だと思う、だけど、よくわからないんだ、ルーデルが見たのは吹き飛ばしても再生する化け物だったと言う話だし。」

「つまり正体不明か・・・」

「現状はそうなるかな、まあ、次からは遠距離で動きを止めるから、この借りは返してやる。」

「頼もしい言葉だ、まあ一先ずはマインズ王国に来てくれ、一息つこう。」

ルクスの言葉の通り、俺達はマインズ王国に向かうのだった。


「ヨシノブ、此度は災難だったな、我が国はお主達を歓迎いたす。

屋敷は用意してある。

ルクスから聞いた通り少し郊外の大きめの所にしたのだが、良かったのか?」

「お心遣い感謝いたします。私は少々子沢山なもので。」


「うむ、聞いておる、孤児を受け入れているのであろう。

おお、そうだった、連れている住人も全て我が国の民として受け入れよう。

そうしたほうがヨシノブの負担が軽いであろう。」

俺達が連れてきた住人達もマインズ王国は対等な国民として受け入れてくれる。


「重ね重ね感謝します。」

「なに、ワシもヨシノブには世話になったからのぅ、困っている時は支え合おうではないか。」

ルーズ王は笑顔で俺達を迎え入れてくれたのだった。


俺の来訪を聞いてリーナとリズが駆けつけてくる。

二人は城に住んでいる為、動きが早かった。

「ヨシノブさん、ご無事でしたか?」

リーナは俺の身体をジロジロと見て怪我をしてないか確認していた。

その横でリズがルクスに詰め寄っている。

「お兄様、ちゃんとヨシノブさんをお守りしたのですか!」

「二人共落ち着きなさい、ヨシノブに怪我は無い。大丈夫だ。

そうだろ、ヨシノブ。」

「そうですよ、怪我はありませんから。

しばらくこの国でお世話になりますので、お二人共よろしくお願いしますね。」


「わかりました。

何かあればお知らせくださいね。」

リズは身を正し、礼儀正しく言葉を返すが、

「わかりました、じゃあ今日からお世話に行きますね。」

リーナは何処か違う答え方をしている。


「リーナ、お世話に行くってなにかな?」

ルクスはあまりの妹の発言にコメカミに怒りが出ているようだった。

「ですから、ヨシノブさんのお屋敷に行って、お世話するのです。」

「それはお前が出来る事ではないだろ?

それより本心はなんだ?」

「だ、だって、ヨシノブさんの所なら美味しいものが・・・いたい!お兄様叩かないください!」

「リーナ!お前はどれだけ恥ずかしいんだ、食べ物目当てで人の屋敷に滞在しようとは!

もう少し王族としての自覚をもて!」

「まあまあ、ルクスそんなに怒らなくてもいいよ。

リーナさんはまだ子供じゃないか。

はい、これをどうぞ。」

俺は一応会った時を考えて、飴を用意していた。

「これは・・・あまいです〜」

毒味もせず、袋をサッとあけ口に放り込んだリーナを見て、ルクスは更に頭を抱える。

「ヨシノブの用意した物だから大丈夫なのはわかるが、少しはマナーも考えろ。」

「まあまあ。」

俺はルクスをなだめるが、

「ヨシノブもヨシノブだ、お前わかってて渡しただろ!」

「いやぁ〜騒ぐルクスが面白くてな、普段すましてるのに、リーナさん相手だと、お兄ちゃんしてるよなって。」

「人をからかうな!リーナはまだ子供なんだから今のうちにマナーを・・・」

ルクスが俺を叱る中、リズが俺の袖を引っ張り、

「私も欲しいです・・・」

恥ずかしそうに告げてくるが、一番恥ずかしそうにしているのは、二人目の妹の醜態を見せられたルクスであった。

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