第287話 根の国か?

「主よ、よくお越しくださった。」

酒呑童子は跪き、シモの来訪を歓迎する。

「酒呑、来たのよ。」

「この地の菓子を用意しております、どうぞごゆるりとなさってくださいませ。」

「うにゅ、これ美味しいのよ、酒呑も食べるのよ。」

シモが饅頭を一つ摘み、酒呑童子の口に持っていく。

「も、勿体無い。」

「いいのよ、あーんなのよ。」

「あ、あーん。」

酒呑童子はシモから饅頭を食べさせてもらうのだった。

「有難き幸せにございます。」

酒呑童子は涙を流し喜んでいた。


「爺さん、流石に鬼の対応おかしくないか?」

リョウはシモの歓迎具合を見て違和感を感じる。

アキラ流対話術は物理の脅しだ、恐怖に震える事はあるが感動の涙など流す筈が無い。


「ふむ、シモちゃんの系譜がこの世界に関係しておるのか?」

「この世界って・・・黄泉比良坂を越えたのだから根の国か?」

「ふむ、シモちゃんから神に繋がる気配があったがもしかするかもなぁ〜」

リョウとアキラが話す中、

鬼と無邪気に会話するシモの姿があった。


「シモ、なれすぎ。」

「リナ、リナにも紹介するのよ、友達の酒呑、酒呑こっちは親友のリナなのよ。」

「主の親友にございますか、主がお世話になっております。」

酒呑童子は頭を下げる。


「頭を下げる必要はない、シモは私の親友だから、世話も当然。」

「リナ、シモは世話を受けてないのよ!」

「シモは常識がないから。」

「むーなのよ!」

シモがリナをポカポカ叩くがどう見ても二人のじゃれ合いだった。

「叩く悪い子はこうよ。」

リナは反撃にシモの脇をワキワキする。

「ふにゃぁ〜それはダメなのよ!」

シモはワキワキされ、転がりまわる。

「とどめ。」

「にゃぁ〜〜〜ごめんなのよ、止めるのよ〜」

「反省した?」

「ふにゃぁ〜お返しなのよ!」

リナが止めたあと、シモが反撃にリナのワキを攻める。

「や、やめて!シモ、ストップ!」

「やめないのよ、シモの強さを思い知るのよ。」

今度はリナが悶る番だった。


二人がじゃれ合いを続ける中、大人達は話し合いを始める

「酒呑さん、俺達がこの世界に来たのは・・・」

「リョウさんでしたか、来た理由は知っております、この世界を治める者がお会いになられます。

明日、案内致しますので、その時にお話を。」

「では、一つ、この世界を治める人は話を聞いてくれるつもりですか?」

「はい、主の為に力を尽くしてくれる筈です。」

「それなら良かった、明日、願い出ることにします。」

その日は酒呑童子の薦めの元、ゆっくりすごす一行だった。

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