第286話 黄泉比良坂

島根にある黄泉比良坂にきていた。

「シモちゃん、この岩の向こうにたぶん別の世界がある筈、開くための準備はできているけど、大丈夫かな?」

「大丈夫なのよ!おとうさんの元に行くなら全ての物を薙ぎ倒す覚悟があるのよ。」

「ほ、ほどほどにね。

じゃあ、開くよ。」

リョウは前もって陣を敷いており、地脈の力を持って異界への門を開く。


「凄いのよ!リョウ兄普通じゃないのよ!」

「シモちゃんの方が、普通じゃないけど・・・まあ、いい向かおう。」

開かれた門にリョウ、アキラ、シモ、リナに加えて、

リョウの親友のヒロキとダイキが来ていた。

二人共戦力としては人を超えており、ヒロキはトレジャーハンターとして世界を飛び回っている専門家だった。


「空気が違うな。」

リョウは気配が違う事に警戒心を上げる。

「ふむ、魔力に満ちておるのぅ、このような場所があるとは知らなんだわい。」

リョウと違いアキラは何事もないように話す。


「リョウ、何でアキラさんは普通にしてるんだ?息苦しいぐらいになっているんだが?」

ダイキは違和感が酷いようだって。

「ダイキ大丈夫か?たぶん合う合わないがあるんだと思う、無理なら先に出ておくか?」

「冗談言うなよ、これぐらい何でもない。」

「無理なら早めに言えよ、シモちゃんは大丈夫?」

リョウはシモの心配をするが・・・


「うにゅ?心地いいのよ、力が湧き上がるのよ。

刀も喜んでいるのよ。」

聖剣を打ち直した刀は刀身が黒く染まり、周囲の魔力を吸っているようだった。


「大丈夫ならいいんだ、ってヒロキ!何してるんだよ!」

「何って?異世界だぜ!調査しないでどうする?」

ヒロキは壁を削りサンプルを取っていた。


「このメンバーで大丈夫なのか・・・?」

リョウは少し不安になりつつも先を急ぐ。


すると二人の鬼が前方に待ち構えていた。

「鬼か?よしやるか!」

ダイキが鉄甲をはめ、戦闘態勢にうつるが・・・

 

「姫、お待ちしておりました。さあ、こちらへ。」

何故かシモを姫と呼び、丁重に案内しようとする。

「罠か?」

リョウは警戒を強めるが・・・


「クマ、トラクマ、ここにすんでるのよ?」

「はっ!我等はここを棲家にしておりまする。」

「酒呑様がお待ちであります。どうか同行を。」

シモは何も警戒する事なく近付き話し始める。


「シモちゃん、その二人は?」

「酒呑の友達のクマとトラクマなのよ、仲良くなったのよ。」

「勿体無いお言葉、我等この身にかけて御身を御守り致す。」

二人は跪き、忠誠を誓うのだった。


「一体シモちゃん何をしたのだか・・・」

「お爺ちゃんの会話方式でお話したのよ。

最初は知らない言葉だったけど、お話出来るようになったのよ。」

「ふむ、あれは何処でも共通じゃからな、会話が出来るものなら話してきたであろう?」

アキラは誇らしげに語る。


「そうなのよ、最初にガツンとすればお話出来るようになったのよ。

お爺ちゃん凄いのよ。」

「そうじゃろ、まあ、会話出来ん物は救いようもないのじゃがな。」

アキラは笑っているが、どうやらアキラ流会話術(物理)をこの幼女はマスターしてしまったようだった。


「さあ、我等の城にお越しくださいませ。」

こうして初めて来た異界なのに歓迎を受けるのであった・・・

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