第246話 宴
話しかけてくる貴族が増えてくる、その中には・・・
「先の戦の際に貴殿の領土に行った者はどうなったのか?
その場に私の父がいたはずなのだが・・・」
「失礼ですが、先日の戦では剣を交える前に終わりましたので、名を知る方はおりません。」
「くっ、一方的にやられたと言うのは本当だったのか・・・」
「申し訳ない、しかし、戦場の事、ご容赦願えれば。」
「いや、一方的に攻めた我が国が悪いのだ、それはわかっておる。しかし、亡くなったものを悼む気持ちは許して欲しい。」
「それはご随意に、私もそれにつきましては何も言うつもりはございません。」
「かたじけない。」
戦争で亡くなった者の家族もいたのだが、前もってユリウスが説明しており、スコール公爵が命を張ってまで援軍として呼び、それに応えたヨシノブを害する気は無かった。
それどころか・・・
「貴殿の国の産物は素晴らしい、今後も取引を願いたい、出来れば増やして貰えぬか?」
「待て、お主は既に儲けておろう、我が領と取引せぬか?」
多くの物が取引を希望してくる。
そして、いくつかの領地とは今後も交易の話し合いを持つことを約束するのだった。
そんな時にユリウス王がやって来る。
「ヨシノブ、やっと会う事ができたな。」
「ユリウスさん、言われて見れば、この国から始まったのでしたね。」
「それはどういう、いや、まずは妹を助けていただき感謝する、この言葉を言うためにどれほどかかったものかな。」
ユリウスは苦笑いを浮かべる。
「そういえば、ユリスさんの姿が見えませんが?」
「ユリスか・・・私が愚かな為にユリスをあんな目に合わせてしまった。」
「何かあったんですか?よろしければお聞かせください。」
「実は勇者召喚の儀式を行ったときに生命力を奪われたようで、未だに意識が戻らないのだ。」
「それは・・・心痛お察しします。」
こんな所にもツバサの被害者がいたのである。
「ああ、ありがとう。いや、このような暗い話は宴にむかないな、今後の友好も考え明るくいこうではないか。」
ユリウスは明るく振る舞っていた。
暫く話したあとユリウスと別れ、サリナを探していると、サリナと話している男がいた、しかし・・・
「離してください!」
「そんなに冷たくしなくてもいいじゃないか、婚約した仲だろ?」
「あなたとの婚約は終わっています!あなたが破棄したんじゃないですか!」
「何を言ってる、あの時は助からないから破棄したんだ、助かった今は私の婚約者ではないか。」
男はサリナの手を引き離そうとしなかった。
「私の妻を返してもらえないか?」
俺は男の手を振り払い、サリナを引き寄せ、男の前に立つ。
「あっ、えー、ヨシノブ殿?妻?えっどういうこと?」
男は動揺しているようだった。
「話を聞くところ、あなたが一方的に婚約を破棄したのだろう?
ならば、今更出てきて婚約者ヅラは止めてもらおうか。」
「いや、しかしてすね、私とサリナは幼き頃からの婚約者でして・・・」
「それを破棄したんだろ?最低な奴だな、今なら名前も聞かないでおいてやる、大人しく引き下がれ、だが引き下がらない場合は・・・」
「ど、どうすると言うんだよ・・・」
男は怯えながらも、サリナに未練があるのか、まだ抵抗しようとするが・・・
「待ちたまえ、トント男爵、ヨシノブさんに敵対するなら、その前に私が相手になってやろう。」
男の後ろからアランが現れるのだった。
「ス、スコール公爵!」
トントは固まる、男爵からしたら公爵など雲の上の存在、その人に敵対宣言をされると今後やっていけなくなる。
「ヨシノブさんは私の義兄弟だ、その妻と言えば私の身内にもなるのだが、その辺はどう考えるかな?」
「あっ、それは・・・その・・・」
「答えられないのなら、下がれ!これ以上、我が国の恥を晒すな!」
「はいぃぃぃぃ、すみませんでした!」
トントは脱兎のように逃げ出していく。
「ヨシノブさん、我が国の貴族がすまない。
サリナさんも嫌な思いをさせただろう、どうか許して欲しい。」
「アランさん助かりました。
俺の事はいいです、サリナは?」
「私も気にしません、ただ、あの人が婚約者だったと思うと・・・情けなくなりますね。」
サリナにとっては幼馴染でもあり、かつては婚約していた相手の醜態をみてゲンナリしていた。
「サリナさんはいい人に巡り会えたからそう思うのですよ、これからもヨシノブさんと幸せに。」
「はい。」
この一件でモス子爵令嬢、サリナがヨシノブの妻となっている事がローラン王国貴族に広まるのだった。
そして、アラン公爵家と義兄弟という事も共に広がり、フレデリカ公爵令嬢とも結婚間近と噂されるのであった。
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