第236話 貴族の暴走
「ディーンさん、これはどういう事でしょう?」
俺はディーンを見る。
「違う!これは私の指示ではない、誰かリュルク男爵の行動を知るものはいないか!
後日判明すれば共犯者としてクビをはねる、心当たりがある者は今すぐに名乗り出よ!」
ディーンは自軍に向かい、声を上げる。
「き、共犯という訳ではありませんか・・・」
一人の騎士が言いにくそうに手をあげ、話し始める。
「なんだ?」
「リュルク男爵ですが、先日のラードで父を失っておりまして、どうやらその事でヨシノブ殿を恨んでいたようなのです。
私はたまたま耳に挟んだだけなのですが、まさかこんな事をしでかすとは・・・」
「ラードを落としたのはローラン王国であろう、それでヨシノブさんを恨むとは筋違いである。」
すると豪華な貴族服を着た男が、
「ディーン王太子、そう言われましても、ローラン王国兵をラードに追い立て、攻め込ませたのはこの者達ですぞ、背くつもりはありませぬが、リュルク男爵の気持ちもわかるところがあります。」
その言葉に騎士の多くが頷く・・・
「それならもう一度戦争なのよ!おとうさんの命を狙う奴等は皆殺しなのよ。」
子供達は既に兵士に向かい機関銃を向けており、俺の前にはパウル、オットーが守備に入る。
シモは勇ましく先頭に立っている。
「ま、待ってください!私達にそんなつもりはありません!あなた達は王命に背くのですか!」
ルイスが慌てて騎士達の前に立ちはだかり、止めるよう動く。
「先程も言いましたが背くつもりはございません。ただ、リュルク男爵の気持ちがわかると申した次第です。」
「リバル伯爵、そのような言葉遊びをするような場ではない。言葉を慎み給え!」
ディーンはリバルを叱る。
「申し訳ありません。」
リバルは一先ず謝るが・・・
「ディーンさん、どうやら友好の道は遠いみたいですね。」
「こ、これは、いえ、我等の失態ですね。今一度国内を纏める必要があるようです。」
「そのようですね。
私としてもこのままあなた方を受け入れる訳にはいかなくなりました。
話し合いは少数で行いましょう。
兵士と騎士の方々は郊外にて待機してもらいましょう。」
「なるほど、この国は友好の使者を郊外で待たすという非礼を行うのてすね。」
リバルは声高に喋る。
「剣を向けておいて何を言う。」
「それはそのものが勝手にした事、ですから、あなた方が彼を殺した事を不問にしているのです。
ですが!たかが、騎士爵風情が男爵を手にかけたのですぞ、本来は謝罪するべきが筋では?」
「見解の相違だな、俺達は既にマルドラド王国から離れている独立国だ、文句があるならかかってこい。」
「おお、怖い、これだから成り上がりの下賤の者はいかん、ディーン王太子、ルイス王女、この者の本性を見たでしょう。
友好など考えずに一気に滅ぼしてしまいましょう。
幸い、砦には入れましたしね。
全員突撃態勢をとれ!」
「ならん!全員戦うでない!」
ディーンは叫ぶが・・・
「王太子様はお疲れのようだ、直ぐに後方にお下がりを。」
「なっ!はなせ、はなさんか!」
ディーンは騎士に押さえられ、後ろに連れて行かれる。
だが、ディーンが連れて行かれている時にルイスは俺達の所に走ってきた。
「ルイスは向こうに行かなくていいのかい?」
「ヨシノブさん、これはあの者の反乱にございます。
どうか私達をお助けください。」
「ルイス王女!なぜそのような者のところに!」
「リバル伯爵、我等は友好に来たのです、それを無にしようとは許されざる大罪ですよ!」
「ルイス王女は奴等に洗脳されてしまったのだ、良いか、ルイス王女を救い出すのだ!」
リバルは周囲に檄を飛ばす。
「勇ましいのはいいがその数でやり合うのか?」
マルドラド王国兵は千しかいない、たとえ基地内にいるとて敵では無いと感じていた。
「くくく、そんな筈は無かろう、後方には2万の軍勢が来ておる。
まあ、ここにいるのは精鋭であるからな!この砦の規模からしてよくて2千であろう、内部に入っている以上敵ではないわ!」
「そうか、ならやり合う事になるな。」
「命乞いせんとはいさぎがよい、我が娘の仇とらせてもらうぞ!」
リバルの娘はラード陥落の際、祖父と共に遠征軍として来ていたのだ、女でありながら騎士として名を馳せようと、名声を求めていたのである。
しかし、それ以後行方を知るものはいなかった。
その為にリバルはローラン王国を怨み、ラードを破壊したヨシノブを怨んでいたのである。
「全軍とつ・・・」
リバルが突撃命令を下す前に後方から激しい爆撃音が響き渡る。
「な、何が起きている・・・」
後方から上がる煙を見てリバルは呆然と立ち尽くしていた。
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