第196話 村の決起

俺はウメの村にウメの生存を伝える使者及び、村の調査員としてマロニーを送っていた。

ツバサに傾倒して敵対するような村なら、即座に逃げるようにとも伝えていた。

「これは!」

村に着いたマロニーが見たのはユキムラの死体とそれを取り囲み悲しみにくれる村人達であった。


「失礼ですが、この方は?」

マロニーは集団の後ろにいた人の良さそうな人に話しかける。

「旅人かい?この方はこの村の村長だ。

村の為に尽くしてくれる素晴らしいお方だったのだよ・・・」

村人の多くは涙していた、それだけ慕われていたのだろう。


「何故そのような方がこのような理不尽な事に・・・」


「あの勇者を名乗る痴れ者のせいだ!」


「勇者?いったい何があったのですか?」

マロニーは事情を聞き出す。

ツバサがユキムラを殺害、ユキムラの最後の命令で村人達は一斉に避難した事、そして、ツバサとその仲間がいなくなってから、ユキムラを弔っている所との事だった。


「ならば、知らせたい事がある、この村出身のウメ殿は生きておられるぞ。」

「なんだと!ウメ様が生きておいでなのか!」

「ああ、川を流れて来た所を我等の主君がお助けになった、今は我等の町にて暮らしておられる。」


「その話は本当ですか?」

奥からウメに似た女性がやってくる。

彼女はユキムラの娘であり、ウメの姉にあたるマツといった。


「本当でございます。私は主より、ウメ殿を無事を知らせる使者として参りました。」

「ウメは元気なのですか!」


「はい、今は回復なされ、元気に過ごしております。

ここに一緒に来なかったのは主がツバサがいる可能性を考慮し、まずは調査ということで私が参った次第にございます。」

「そうですか、ウメが元気なら良いのです。しかし、ツバサを警戒なさるとはそなたの主も思う所がおありか?」


「はい、かなり短慮な人物と聞き及んでおります。

一度対峙したのですがまがいなりにも勇者、仕止めた筈が未だに生きておるようにございます。」


「そうですか・・・勇者というのは何かの間違いと思いたかったのですが・・・

皆さん!こうなった以上、私はトート様の意思に背くことになりますが、父の仇を討ちます。

どうか、村長の任を放棄することを許してください。」

マツは本来ユキムラの後を継ぎ村長になるべき立場であるが、無念にも殺された父の仇を討とうと決意を固めていた。


「マツ様!お待ちをどうか我等もお供させてくださいませ!」

「我等も共に!」

多くの村人が立ち上がる。


「みんな・・・わかりました、志を共にするものは一緒に参りましょう。」

「おお!」

村人達の士気は高く、多くの者達がマツと共にしようとする。


「お待ちを、一度我が主のヨシノブ様の元にお越しくださいませんか?

必ずやお力になれると思います。」


「・・・わかりました、一度ウメにも話しておきたいですし、ヨシノブさんにお会いいたしましょう。」

「では、私が案内しますので、さあ行きましょう。」

マロニーはマツ達を連れて基地を目指すのだった。

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