第195話 村の惨劇
「勇者殿はおられるか!」
村にいるツバサの元に1人の侍がやってくる。
「俺が勇者ツバサだが、あなたは?」
「これは勇者殿、某は勇者アキラの仲間であった、剣聖エローイが末裔、リッターと申す。
どうか勇者殿の仲間に加えていただきたい!」
「俺の仲間に・・・」
「是非、お頼み申す!」
「しかし、俺はもう戦う気は・・・」
「何の勇者殿、勇者殿がお心を痛めておられる事は重々承知しております。
しかし、勇者殿がこの世界にお越しくださった事には必ず意味がございます。
どうか我等を導きください。」
リッターは深く頭を下げる。
「いや、でも俺はもう戦いたく無い・・・」
「勇者殿、ならばこれをお付けくださいませ。」
リッターは腕輪を差し出してくる。
「これは?」
「勇者の腕輪にございます。
かつて勇者アキラ様が残された勇者の秘宝の一つにございます。
これを装備なされれば、あなた様のやるべき道が見えてくることでしょう。」
あまりにリッターの熱のこもった説得にツバサは・・・
「つけるだけだからな・・・」
取り敢えず、腕輪をつけるが・・・
「なっ、外れない!どうなっているんだ!」
つけて直ぐに外そうとするが外れなくなった。
「それは勇者殿が使命を達成されると外れると伝わってございます。
さあ、我と共に伝説を作りましょう!」
「い、いやだぁ、もう戦いたくない、なんだこれは僕の中に何かが入ってくる、止めろ、止めてくれ、お前は誰だ、いやだ、僕がぼくじゃなくな・・・
・・・リッターと言ったな、我を良く目覚めさせてくれた。
我の使命は世界に混沌をもたらす者を始末する事だ、共について参れ。」
ツバサの意識は乗っ取られ、別人格となっていた。
リッターが持って来たのは勇者の腕輪ではなかった、勇者が持っていた腕輪であった。
それはかつて勇者アキラが退治した、世界に恐怖に陥れた魔王の意識を封じた物であり、アキラが地球に帰る際に仲間のエローイに封印を託したものであった。
だが、時がたつにつれ、伝承が誤って伝わっており、いつの間にか勇者の装備として奉られていたのだった。
「勇者殿、お目覚めになられたか、何処へなりとお供いたしましょう。」
「うむ、ついて参れ、我と共に世界を統べようではないか!」
ツバサはリッターを連れて、ユキムラの元に向かう。
「これはツバサ様、どうなされましたか?」
「うむ、我は使命を果たす旅に出ることにした、よってお前達には協力を命じる。」
「えっ、いや、わかりました。
急な事で驚きましたが何をすればよろしいでしょうか?」
「まずは金を用意致せ、軍資金が無いと何も出来ん、あと、若い娘を私の側に寄越すのだ、どうもこの身体は性欲が強くていかんな。」
「えっ?お金は用意致します。ですが、どうか女性の提出はお許しくださいませ。」
ユキムラは女性を差し出す事を拒絶する。
「なんだと?この我の子種がいらんと言うのか?」
「そのような事は・・・しかし、妻になさるのならまだしも、側に差し出せとはご無体ご命令にございます。」
「今さら何を言っておる。お前はすでに差し出したではないか。」
「へっ?」
「ウメとか言ったな、あの娘の具合は良かったぞ。
そうだ、次女と言っておったな、ならば長女もおる筈、その娘を連れてくるのだ。」
「ツバサ様、もしかしてウメを・・・」
「何を怒っておる、その為に我の側に置いたのだろう。
うまかったぞ、褒めてつかわす。」
「よ、よくも娘を!」
ユキムラは居間に置いてあった刀を取りツバサに向ける。
「我に、勇者に逆らうと言うのだな・・・
リッター、そなたの腕を見せよ。
勇者の仲間を名乗れるか試してくれる。」
「お任せあれ、ユキムラ!勇者殿に刀を向けるとはどういうつもりだ!
お前も勇者の末裔を名乗るなら勇者に従うべきであろう。」
「娘の仇だ、今まで何故自殺したかわからなかったが、今わかった!
リッターお前も聞いていただろ?
こんな奴が勇者な筈がない!」
「致し方なし、死して娘に会うがよい。」
リッターは剣を刀を構える。
ユキムラは一気に間合いを詰め、リッターに斬りかかるが・・・
「秘技、椿!」
リッターの神速の剣に一太刀をもって斬られる。
「勇者の血しか継承してない者が、勇者の剣術を継承している者に勝てる筈がなかろう。」
「む、むねん・・・私には仇は討てなかったか・・・だが・・・」
ユキムラは最後の力を振り絞り、外に転がり出る。
「この期に及んで何を?」
「みんな、ツバサは敵だ、村を捨てて逃げろ!」
最後の声を発して倒れるのだった。
村人はその声に反応する。
「ユキムラ様!」
何人か駆け寄るが既に絶命していた。
「みんな、村長の最後の命令だ、直ぐに逃げろ!」
ユキムラの死を確認した者が大声で集まって来ようとしていた者に伝える。
「ちっ!」
リッターは黙らす為に首をはねたが時既に遅し、その光景を見て、村中の者達が逃げ始めた。
「勇者殿、申し訳ありません。
望んだ物が手に入らないようです。」
「致し方あるまい、路金だけ回収して別の町に向かうぞ。」
「はっ!」
ツバサとリッターは村をあとにするのだった。
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