第178話 ルナとレオ

ハートから解放されたルナは涙を流し始めた。

「えーと、ルナさん、大丈夫?」

俺はルナに声をかける。

「あなたが私を助けてくれたの?」

「一応そうなるのかな?」

ルナは俺に抱きつき大泣きを始めた・・・


「貴様!司令になんて真似を!」

ハートが横で怒っている。

「まあまあ、ハート、この子はいいから、シモも銃をしまいなさい。」

「はっ!」

「シモは銃のチェックをしているだけなのよ。」

シモは目線を反らして認めない。

「いいからしまいなさい。」

「・・・はいなのよ。」

シモは銃をしまうが、俺のそばを離れなくなった。


暫く大泣きしたあと、ルナに話を聞く事が出来た、話によると、

彼女はイギリス人で日本には父親と一緒に来たそうだ、そして、京都の嵐山を観光中にこちらに来たようだった。

「ヨシノブ、ここは?」

「異世界といったらわかるかな?」

「わかるよ、ファンタジーの世界だよね。」

「まあ、そうなんだけど、ルナさんもそのファンタジーの世界に来てしまったんだ。」


「えっ?それって冗談だよね?」

「残念ながら冗談じゃないんだ・・・それに帰る手段も見つかってないんだ。」

「ウソ・・・ウソだと言ってよ、ヨシノブ!」

俺は首を振る。

ルナはショックだったのか腰を抜かしたように座り込んだ・・・


「そんな・・・もうパパ、ママに会えないなんて・・・」

ルナが溢した言葉に、

「テレビ電話でいいなら週に一回は出来るよ。」

「えっ?」

ルナの目が点になる。


「不安定でいいなら毎日出来るけど、取り敢えず携帯持ってる?」

「はい、持ってます!」

「じゃあ、こっちに来て、電話しようか。」

「はい!」


俺はルナを連れて通信室に、

「ここなら電話できるから。あっ、充電器はこれね、好きに使っていいよ。」

俺の言葉にルナは充電器をさし、テレビ電話を始めた。


「おとうさん!」

「ルナ!無事だったのかい!」

「うん、親切な人に助けられてやっと連絡出来たの!」

「そうかい、それでいつ帰ってこれるんだい?」

ルナは事情を説明するが、父親は理解出来ていないようだった。

そこで俺が現状を話す事になる。


「はじめまして、俺は前田ヨシノブと言います。」

「娘が世話になっている、私はレオ・クレアだ。」

「レオさん、落ち着いて聞いてください、ルナさんは現在異世界に来ています。」

「なに?君は何を言っているんだい?」

「先日の日本の騒動について聞いていませんか?」

「先日の・・・あのゴシップ記事かい?確かに行方不明者が異世界に・・・まさか!」

「はい、残念ながらルナさんもここに来てしまいました。」

「帰る術はあるのかい?」

「現在捜索中ですが、見つかっていないのが現状です。」

俺と話ながら、レオはパソコンを操作しているようだった。

「・・・ヨシノブくんと言ったね。」

「はい。」

「君は日本で死んだことになっていると聞くが?」

「ええ、俺は魂だけこちらに来たようです。ですので他の人とは少し違うのです。

他の子供達は身体ごと来たようですね。」

「君には他の人に無い力があるとか。」

「ええ、その為にこうして連絡をとる事が出来るんです。」

それからもこの世界について色々質問され・・・


「ヨシノブくん、ビジネスの話をしようか。」

「ビジネスですか?」

「君には妹がいるね。」

「はい、いますね。」

「君が娘を守ってくれるなら、妹さんに1000万贈ろうではないか。」

「いやいや、お金なんて良いですよ、ちゃんと守りますから。」

「いや、これは正当な報酬だ、その代わり娘にちゃんとした食事と寝床・・・生活に必要な物を用意してくれないか?」

「言われなくても行います。」

俺は保護することに金を貰う気はなかった。


「ならば、受け取ってくれ、いや受け取ってもらう!」

「いやいや、受け取れません!俺は善意でやらしてもらいますから!」

「君も強情だな!」

「レオさんも強情ですよね!」

俺とレオは画面越しに睨み会う。


「あの~パパ、ヨシノブ、なんで喧嘩してるの?」

「「してない!こいつが強情なだけだ!」」

「はぁ、パパもヨシノブに失礼だよ。

落ち着いて。」

「ルナだってだな、ヨシノブが正当な報酬を受けてくれないんだ。」

「だからって、喧嘩したら意味ないでしょ!」

「うっ!」

「ヨシノブ、パパが失礼しました。」

ルナに頭を下げられ、俺も恥ずかしくなる。


「いや、俺も強情だったよ、君を保護するのにお金を取りたくなかったからね。

これから一緒に暮らす家族なんだから。」

「ヨシノブ、それって・・・」

ルナは少し恥ずかしそうに頬を赤らめる。


「ル、ルナ?落ちついて、パパの方を見るんだ、良いかい、早まった真似をするんじゃないよ。」

レオは頬を赤らめるルナを見て動揺が止まらない。


「パパ、私はこっちで暮らす事になったから・・・」

ルナの言葉に何故か艶のようなものが混ざる。


「ま、待ちなさい、落ち着こう、一度話し合う必要がある。

良いかいルナ。

その感情は吊り橋効果と言ってだね、ルナの不安な気持ちが起こさせる錯覚なんだ。

だから、くれぐれも早まった事をしてはいけないよ。」

「パパ、大丈夫よ、ママも言ってたわ。

・・・相手は自分の心で見つけなさいって。」

「・・・ママ!いったい何を教えて・・・」

そこで電話が切れた。


「どうやら時間のようだね、また暫くしたら電話が出来るようになるけど、どうする?」


「いつでも電話出来るのよね?」

「まあ、少し不安定で短時間になるけど。」

「それなら今度にするね、それより住むところに案内してくれる?」

「わかった、部屋を用意するよ。」

電話をして元気になったルナを連れて官舎に向かうのだった。

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