第173話 マルコスの末路

「ひぃぃぃぃ、な、なんて事をするんだ!」

マルコスは腰を抜かす。

「どうするの?ここで死ぬの?出ていくの?」

「で、出ていきます!さあ、みんな早く行くぞ!」

マルコスは家族に声をかけるが・・・


「あなたにはついて行けません。

恩のあるかたにこのような真似をするなんて・・・」

ジェナは一連の話でついにマルコスへの情が切れたようだった。


「ジェナ?スィン、フィリア、ジェナが変なんだ、お前達からも言ってくれ。」


「お父さん、あり得ないよ。

何でヨシノブさんを裏切れるのさ、それに警備員を使って追い出そうなんて・・・」

スィンも顔を青くしながらマルコスに話しかけている。


「私もお父さんについていけないわ、だって死にたくないもの・・・

私は謝ってと言ったはずよ、何で逆をするのよ・・・」

フィリアは泣いていた、ヨシノブのいや、子供達の行動を知っているフィリアはマルコスが助からない事に気付いていた。

ヨシノブはきっとこの場を追い出すだけだろう、この人はなんだかんだ言ってもお人好しだ。

でも、子供達は違う、たとえこの場を見逃しても必ず始末する筈、私が一緒に行っても死体が一つ増えるだけだろう・・・


「お前達は誰も私にお父さんについて来てくれないのか?」


「ごめんなさい、お父さん・・・僕は行きたくありません。」

「私も無理よ、ヨシノブさんに謝って許してもらう道を選ぶわ。」

子供二人はマルコスと離れる事を選ぶ。


「ジェナ、お前は一緒に来てくれるだろ?

長年夫婦として一緒にやってきたじゃないか。」

「ごめんなさい、私もついていけないわ、子供達と一緒にいるわ。

・・・それにあなたには妾さんがいるじゃない、その方と再起すればいいでしょ?」


「えっ、な、何の事だ?」

「知らないと思っていたの?

若い女の子を囲って居たじゃない。

私も子供の事があるから言い出さなかったけど、今さら夫婦の仲なんて言わないでもらえない?」

「・・・」


マルコスは絶句していた。

確かに若い娘を妾としていた。

しかし、マルコスにとってはジェナへの愛が冷めたわけでもなかった。

ただ、欲望に負けた結果であったのだが・・・


「本当に来ないつもりなのか?」

「行かないわ、今ここで離縁しましょう。」

「くっ、後悔するぞ!その年で再婚なんて無理だろう!」

「そんなのあなたに関係無いでしょ!逸れに私には子供達がいるから大丈夫よ!」

ジェナは子供達を抱き締める。


「マルコス、もういいだろ?そろそろ出ていけ。

ジェナさん、スィン、フィリアはもう少し話し合おうか。」


「はい、わかりました。この度は前の夫がご迷惑をおかけしました。」

ジェナは深く頭を下げ、スィンとフィリアをそれに続く。


「お前達・・・」

マルコスがジェナ達に近付こうとするが、

パウルが銃口を向ける。


「動くな!一歩でも近付いたら撃つ。」

「ひぃぃぃぃ!」

「さっさと出ていけ!」

マルコスは恐怖に負けて走って出て行った。

金を持つことも忘れて・・・


「くそっ、あいつら何なんだよ、手持ちも少ないしどうするか・・・」

マルコスは慌てて出てきた事を後悔していた。

「まあ、ヨシノブはここに住んでいないんだ、暫くしたらいなくなるだろう。

そしたら店に取りに行くか・・・

いや、店事取るか、何せ俺が店長だもんな。

取り敢えずは今ある金で宿をとるか・・・」

手持ちの財布にある金で何日も泊まれる宿を考えると安宿しかないと判断して、大通りから離れた宿に向かう・・・


人気の無い道を歩いていると急に転けてしまう。

立ち上がろうとするも左足が動かない。

「なんなんだ?あれ血が・・・」

左足を見ると大量の失血をしている。

意識すると痛みが出てくる、

「痛いいたい、なんなんだ、早く止血しないと!」

マルコスがハンカチで縛ろうとすると今度は右手が撃ち抜かれた。

「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」

マルコスの悲鳴が木霊する。

「だ、誰か助けてくれ・・・」

マルコスは這いながら助けを求めようとするが・・・

頭を撃ち抜かれて絶命するのである。


マルコスをやったのはヨシノブと共に来ていた子供の一人でシーゲルといった、

彼はヨシノブと出会う前から気配を消すのに優れており、尾行を得意としていた、そして、暗殺も・・・


店を出たマルコスをつけ、人気が無くなるまでついて来ていたのである。

「さて、顔を潰しておくか。」

シーゲルは死体を燃やす。そして身元が判明しないように頭を爆破してその場を去るのであった。


死体は直ぐに見つかるが身元を示すものが無かった為、浮浪者の変死として処理されるのであった。



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