第153話 難民

やって来た住人は三千人だった、

その為、基地は大忙しだった。

まずは全員に食事と水が振る舞われる。


そして、テントが準備出来次第みんなを案内していく。

「皆さん、すみませんが暫くの間、テントで過ごしてください。

すぐに家を用意しますので。」

サリナが謝るが住人達はいきなり来た自分達の立場を理解していた為、文句をいうこと無く指示に従っている。


「みんな、備蓄の確認をお願いできるかな?ヨシノブさんが帰って来るまで持たさないとね。

数日だと思うけど、一応、ラードから食料を買っておいて貰える?」

サリナは細かく指示を出し、子供達も忙しく動くがどことなく嬉しそうだった。


住人達の事が片付きつつあるなか、ルイスにサリナは声をかけられた。

「サリナさん、少しお話をいいですか?」

「・・・はい。」

サリナとルイスは二人になり話を始める。


「サリナさん、これは亡命です・・・

国際問題になりますよ。」

ルイスは険しい表情を浮かべている。


「では、私にお父様達を見捨てろと?」

「そうは言ってません、ですが、ヨシノブさんと連絡がついてからでも良かったのでは?」

「その間、彼らはどうすれば良いと言うのですか?」


「国境で待機して貰って、国同士の話し合いで決めるべきかと。」

「そんな事をしていたらローラン王国に殺されるだけじゃないですか!」

「ですが、彼等を受け入れた事でローラン王国との戦争が起きるかも知れないのですよ。

サリナさんはモス領の民の為ならマルドラド王国の兵士は死んでも良いと言うのですか!」

「そうは言ってません!ですが見捨てるなんて真似が出来る筈が無いんです!」

ルイスの言葉にサリナも一歩も引かない。


「此処はヨシノブさんの領地であって貴女の土地じゃないんですよ、これ程の問題を勝手に決めていいと思っているんですか!」

「ヨシノブさんならわかってくれます!」

ルイスとサリナは半ば喧嘩のような口論になっていた。


そこにリザークが入ってくる。

「ルイス王女、娘サリナの失礼お詫びします。」

リザークは深く頭を下げる。

「あなたは?」

「サリナの父のリザークと申します。

もし、ローラン王国が攻めて来たときは私の首を差し出してください。

ただ、領民達に罪はありません、どうか彼等の庇護をお願いします。」

「お父様!」

「いいんだよ、サリナ。

この行動をとった以上、代表としての責任があるからね。

元々こうするつもりだったんだ、だけど最後にサリナに会えたし、領民を守れるなら私の人生も誇れる物になるだろう。」

リザークは穏やかないい表情だった。


「リザークさん、貴方の覚悟はわかりました、マルドラド王国としても貴方の意向にそった行動をとることをお約束します。」

「ありがとうございます。」

リザークは深く御礼をのべるがサリナは納得出来ていない表情だった・・・


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