第154話 マルドラド王国

ローラン王国ではモス子爵の逃走が話題となっていた。

「貴族の癖に国を捨てるとは許されざる暴挙!このような行為を許してはなりませんぞ!」

復興仕立ての王宮でカクタス侯爵は熱弁を振るう。

「如何にも、この国難の時に逃走とは恥知らずとはこの事だ。」

「マルドラド王国に逃げればすむと浅はかな考え、ここは我等の力を見せる時ですぞ。」

多くの貴族もカクタスの発言に追従する。


「まあ、まて、モス子爵が逃げたのはマルドラド王国だぞ、追手を派遣すればまた問題になろう。」

ユリウス王は熱くなる貴族を宥めるように言うが・・・


「陛下、今、この国は未曾有の危機にございます。」

カクタスは少し落ち着いた声で話し始める。

「うむ、それはわかっておる。」

「モス子爵の一件にて、我等は大義名分を手に入れました。

ここは全力をあげラードの町を手にいれるべきかと。

さすれば昨今の食料危機、及び資金難も片付く良き策と思われます。」

「なに?ラードを奪うのか?」

「はい、何せかの国は我が国から民を奪ったのです。

ここはラードを奪い、町から資金を集め、その後交渉にてラードの町を売り渡すも良し、我等が使っても良いと考えます。」


「ふむ・・・悪くないのか?

先に我が国の民に手を出したのはマルドラド王国なのだからな。

アルメよ、直ちに軍を編成してラードを落とせ。

モス元子爵を捕まえて来るのだ。」

「かしこまりました。」

前回は一部の暴走故の侵攻だったが、今回は七万の軍勢が向けられる事になった。

この軍には国内の食糧難の口減らしも兼ねていた・・・


一方、マルドラド王国では、

「陛下、ローラン王国が侵攻してくるようです。

こちらも迎撃の準備を。」

「うむ、直ちにラードに騎士団を派遣せよ。」

カーム王はすぐに防衛を行う為に軍の編成をするように命じたが・・・


「陛下お待ちを、今回は他国からの亡命が原因と聞き及んでおります。

その者を引き渡せば要らぬ戦にならぬのではないでしょうか?」

内務大臣のツキミ伯爵は別案を出してくる。


「ツキミ伯、そなたは我が国を頼ってきた者を見捨てよと言うのか?」

「それも致し方ないかと、戦になれば数多くの被害が出ます。

亡命貴族一人で片が付くならそれも選択かと思いますが・・・」

ツキミの話に多くの貴族が賛同しだす。


戦になれば当然軍費もかかる上、侵攻ルートにある町は荒らされるのは間違いない。

交流の無い他国の貴族の為に多くの犠牲を出したく無いと思うものは多かった。


そして、カームが反対するも、その声を止める事が出来ず、リザークの引き渡し、及びその娘であるサリナの引き渡しまで決まってしまうのだった・・・

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