第131話 タケフミの八つ当たり

「な、なんなんだよ、これは・・・」

タケフミは混乱している。

周りのみんなも声が出ない・・・


「何でこんなおっさんになってるんだよ!」

「・・・回復の代償って説明したよね」

ユカリは言いにくそうに伝える。


「何でも限度があるだろ!治ってもないのに、こんなおっさんになってどうするんだよ!なあ!」

タケフミはユカリにキツくあたる。


「ご、ごめんなさい。」

「ごめんじゃすまねぇよ!

どうするんだよ!」

「でも・・・」

「でも、じゃねえよ!俺はどうすればいいんだよ・・・」

タケフミは頭を抱える・・・


「で、でも、両手は治ったし、足も一つはあるから松葉杖があれば生活は・・・」

マイは励まそうと治った部分を強調するが・・・

「まだ、治ってないんだよ!それにこんな姿になって日本に帰れるようになってもどうすればいいんだよ。」


周囲に当たり散らすタケフミにかける言葉がなかった。

しかし、あまりにタケフミが騒ぐのでマインズ王国の兵士が部屋の中に入ってきた。


「何を騒いでいる!」

「いえ、これは・・・」

ショウは止めようとするが・・・

「ショウ殿、客人とはいえ、もめ事はお控え願えますか?」

「はい、タケフミ一先ず静かに、一度船に戻ろう。

今後の事はそこで話し合おう。」

タケフミも兵士には怖くて強く出ない、騒ぐ事もなくおとなしく船に向かった。


船に帰った頃にはタケフミも落ち着きを取り戻していたのでショウはタケフミと二人で話す事にした。

「タケフミ、感情的になっても何も変わらない、ここは現実を見よう。」

「だけど、ショウ、俺は足もアレも無いんだぞ。」

「ならどうする?もう一度ユカリさんの回復魔法に頼るか?」

「い、いやだ、これ以上歳をとりたくない。」

タケフミは恐怖を感じていた、歳を取り、自分の寿命が一気になくなった気がしているのだ。


「それなら、今後の生活について考えよう。」

「生活?」

「すぐに日本に帰れない事はわかっているだろ?」

「・・・まあな。」

「その間、どう働くかだよ。」


「働く?ヨシノブのヤツに面倒みさせればいいじゃないか?」

「何を言ってるんだよ、お前は追放された身だろ?庇護して貰えるかわからないぞ。」


「いやいや、こんな身体になったんだぞ。

庇護されるのが当然じゃないか?」


「甘いよ、何かしらで働かなくては生きていけないぞ。」

「やだね、俺はまだ中学生だぞ、何で働かなくてはいけないんだ、ヨシノブのヤツは金も力もあるんだ、養って貰えばいいじゃないか。」


「・・・タケフミ、その考え方は止めとけよ。」

「何でだよ。あいつはお人好しだからな、一応謝れば庇護するだろ?」


「・・・今、ヨシノブさんの所に子供達が庇護されてるけど、」

「なんだ、また子供?やっぱりあいつはロリコンだな。」

タケフミは笑っているがショウには笑い事じゃなかった。


「・・・その子達にお前殺されるぞ?」

「はあ?何でだよ?」


「あの子達のヨシノブさんとサリナさんへの忠誠心は半端ないし、

ヨシノブさんがいないと自分達の生活が終わる事も理解している。

ヨシノブさんを侮辱したら間違いなく殺そうとすると思う。」


「な、何でそんな奴らが・・・」


「お前を助け出したのも、その子供達だよ、しかも、ヨシノブさんの為だけに王都を破壊して救出までやってのけた強者だ。

俺はヨシノブさんに力を使わして貰って色々出来るようになったけど、子供達は自分の力で身に付けたんだ。

実際戦えば、俺は負けると思う。」


タケフミは自分を助けてくれた子供達の動きを覚えていた、それはまるで映画で見たような特殊部隊の動きだった。

「くそっ!なんだよそれ、どれだけヨシノブは力を持っているんだ・・・

あれ?なぁ、お前力をつけたって、何が出来るんだ?」


「ああ、言ってなかったな、俺はヨシノブさんからこの船まやを借りて、使える力を貰ったんだ。」


「ずるいぞ!俺にもくれよ!」

「いや、俺があげれるものでも無いし、ヨシノブさんと仲が良くないタケフミにはくれないと思う。」

「なんだよ、それ!贔屓じゃねえか。」


「はぁ、タケフミいい加減にしろよ、確かに俺はヨシノブさんから厚遇されてると思う。

だけど代わりに、ヨシノブさんの代理で働いているんだ。

それなりに危険はあるしな。」


「なんだよ、お前はヨシノブの犬になったって訳だ、あー情けないな。」

タケフミは八つ当たり気味にショウをバカにする。


「・・・タケフミ、俺は友達として忠告してるつもりだよ。

お前が変わらないと、本当に追い出されるぞ!」

ショウはタケフミを叱る!


「な、なんだよ!

俺が悪いと言うのか!」


「ああ、そうだよ。

よく聞けよ、俺だってヨシノブさんに感謝している一人なんだ、

タケフミが侮辱する事を何とも思ってない訳じゃない。

だけど、友達として忠告してる、

タケフミ、生きていたいならヨシノブさんに謝り逆らうな、そしたらあの人はタケフミが生きていけるようにしてくれる筈だ。


だけど、もしヨシノブさんを認めず、逆らうなら俺もタケフミの敵になるよ。

友達として最後の忠告だ、いいね。」

「おい、ショウ、最後の忠告って・・・」


「言葉の通りだよ、いいかい、

俺を友達と思うなら言葉に従ってくれ。」

ショウはタケフミを置いて、艦長室に戻るのだった。

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