第107話 ため池完成。

「ため池ですか?」

ササルはヨシノブの提案に驚きを隠せない。

水の援助をしてくれているだけでもありがたいのに、その上ため池を作ってくれるなんてなんて・・・

「ヨシノブさん、本当に本当にありがとうございます・・・

これで島の民は助かります。」

ササルはヨシノブの手を取り、涙を流してぶ。


ヨシノブはそこまで喜ばれる事に驚きながらも、ため池を作る場所を聞く。

町の隣、少し盛り上がっている所に作って欲しいと言われたので、俺は重機を使い、バンバン掘る。

出た土はササルと話し合いの後、海に運び、埋め立てを行った。

俺がため池の穴を掘った頃には住人達も協力してくれて、底や壁を補強してくれた。


「みんな!完成だぁ!」

「おお!!」

俺の声に住人達も盛り上がる。

そして、俺は水船を呼び出し、給水管を全開にして放置して水を貯める。


時間がかかる上に離れられないので、集まってくれた住人達と食事会を開く事にした。

食事は野外炊具1号を呼び出し、カレーと唐揚げを用意した。

「うめぇ、なんだこれは!」

住人達は味わった事のない美味さの料理を喜んで食べる。

「おかわりもありますから、いっぱい食べてくださいね。」

俺とマイは住人達に盛大にふるまう。



「・・・なぁ、ミキ、ヨシノブさん、楽しそうだね?」

「お祭りみたいな雰囲気が好きなんじゃないかな?

でも、私達も手伝いましょう。

ヨシノブさんだけじゃ大変でしょ。」

ミキとショウも参加して住人達にふるまっていた。


そして、1日がたつ、溜池は満水となり、

ササルが視察にやってきた。


「これは素晴らしい・・・」

水が満たされた光景にササルは涙する。

これまで、島には小さな泉や井戸で水をまかなっていた。

それがこれ程の池が出来るとは・・・

「ヨシノブさん、本当にありがとうございます。」

「ササルさん、そんなに泣かないでください・・・」

「何とお礼をすれば良いか・・・そうだ、私の娘を貰ってください!」

「いやいや、結構です!」

「そんな事をいわず、娘は気立ても良く、可愛らしいですぞ!」

「いえ、結構です!」

「ははは、遠慮なさらず、些か歳は若いですが、その分永く可愛い時間を楽しめると思えば・・・」

「一応聞きますが、何歳ですか?」

「6歳だ。」

「アウト!ササルさん、もっと娘さんを大切にしてください!」

「何を言うか、住人の事をこれ程思っていただいた方に嫁げるなら娘は幸せであろう。

当家としてもヨシノブさんと一族になれて万々歳ですな。」

「遠慮しますから、ショウくん助けて~」


そして、その光景を見ていたショウは・・・

「やっぱりこうなるよねぇ~」

「ショウ、良く見ときなさいよね。

人助けするのも上手くやるのよ。

私は一夫多妻なんて認めないからね。」

「い、いや、そんな予定は無いから・・・

俺にはミキがいれば充分。」

「ショウ・・・」

ショウとミキは見つめあい、互いにキスをしようとするも・・・


「二人とも此処にいたか、助けてくれても・・・ごめん。

おじさんは帰るね、あとは若い者同士で・・・」

俺は間が悪いことに二人のキスシーンを邪魔したようだった。

俺はそそくさと退散した。


「ままま、待ってください。そんなんじゃありません。」

「そ、そ、そうですよ、な、何を言ってるんですか。」

ショウとミキは顔を真っ赤に染め、否定して、俺を追いかけてくる。


「あれ?ミキとショウさん顔が赤いですけどどうかしました?」

マイが通りかかって、二人を指摘する。

ミキはあわてて弁明しようとしているが、

「マイ、これはその、違うのよ!」

「・・・はい?」

マイは何が違うのかすらわからない。

ショウは話を変えようとヨシノブの行方をたずねる。

「気にしなくていいから、それよりヨシノブさんは?」

「幸せな二人の邪魔をしないようしなきゃって、ショウさんが作った道を使って洞窟の方に行きましたよ。」


「なんて、無駄に行動の早い人だ!」

ショウは恥ずかしさから頭を抱える、

それを見たマイは首を傾げるのだった。

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