第106話 土地を買う。

「山の土地を買い取りたいのですか?」

俺は領主のササル子爵に話を持ちかける、

「ええ、この辺り一帯を買い取りたいのです。」

俺はショウが向かった一帯とそのふもと、そして、海までの道筋を買い取ろうとしていた。

「構いませんが、何故山を?それに金額も白金貨二枚になりますが?」

俺は白金貨二枚を出す。

「なに、道楽ですよ。

それに未だ水の代金を払おうとしている人達に同じ島民だから気にするなと言ってやりたいですしね。」

俺が冗談で付け加えた言葉に子爵は涙を流し出す、

「あなたはなんと清廉な方だ・・・島民の心の為に、何の価値も無いような山を買取り、その上、島の財政に寄与しようとは・・・」


俺は感動され過ぎて少し軽口が過ぎた事を反省する。

「ササルさん、私にも思惑がありますので泣かれる事はないですよ。」

「いや、わかっております。貴方ならそう言うでしょう。

わかりました、島の英雄たる貴方からは当家が続く限り税をいただく事は致しません!」

ササルはヨシノブに何とか報いようと考え、無税にすることを約束する。


こうして、俺は少し心苦しい中、新たな土地を手にいれたのだった。


「・・・ショウくん、港から洞窟まで道の整備をお願い・・・」

「ヨシノブさん、どうしたんですか?酷く元気が無いですね?」

「罪悪感に押し潰されそうだよ、自分の軽口で感動されると困るよね・・・」

事情を聞いたショウは乾いた笑いをあげた。


「あはは・・・ま、まあ、領主様も凄く感謝しているということでは無いでしょうか?」

「まあ、そうか。よし、ならお礼に溜め池でも、作るか。

ショウくん、重機を出すから道の建設を、俺は町の近くに溜め池を作ることを提案してくる。」

俺はショウと話して少し元気を取り戻し、もう一度ササルの元に向かった。


「いや、ヨシノブさん、それもっと感謝されますよ?・・・って、もう行っちゃった。」

ショウは考えなく突き進むヨシノブに少し呆れながら、その優しさのお陰で自分達が生きていられる事に感謝もしていた。


「あれ?ヨシノブさん、帰って来てたよね?」

カエデがショウに話しかけてきた。

「カエデさん、ヨシノブさんならまた領主の所に行きましたよ、感謝されに。」


「あーまた何かするんですね。」

「御名答、溜め池作るって言ってた。」

「本当に優しい人ですね、でも、後先考えてますかね?ここ別の国ですよね?」

カエデはマインズ王国やマルドラド王国と違い、この国では王族につてが無い事を少し不安視していた。


「まあ、商人が土地を買うだけだからね、直ぐにどうこうは無いと思うけど・・・」

「まあ、ヨシノブさんなら領地に帰ると思うし、ここの管理をする人が大変だよね・・・あれ、そういえば誰が此処を管理するの?」

カエデの言葉にショウは返答出来なかった。

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