第79話 自衛隊
「星野さん!貴方は何をしているのですか!」
山本は星野を叱りつける。
「な、なんだと、そもそもあの若造が!」
「いいですか!事態を確認しなくてはいけないのに、あんな話し方で誰が会話になるんですか!」
星野も電話が終わったことで少し責任を感じる所があった。
「しかし、普通電話を切るか?官房長官の私の電話だぞ。」
「向こうは気付いていないみたいでしたからね、それに本当に異世界にいるなら官房長官の肩書きが何になるのですか?
私達が今しなくてはならないのは事の真偽を確かめる事です。
それをあなたは・・・」
「あの~たぶんまだ、連絡出来ると思います。」
モミジは口論する二人に話しかける。
「出来るのかい?」
「はい、たぶん時間制限だけだと思いますので。」
「ならかけたまえ!」
星野は此処に来ても上から目線だった。
「ですが、星野さんがおられたらまた話し合いにならないのでは?」
「なんだと!」
「伊藤、星野官房長官は具合が悪いようだ、別室に案内したまえ。」
「はっ!」
「な、何をする、離せ離さんか!」
山本は星野を別室に閉じ込める事にした。
政府には後で録画している映像を見せればいいだろう・・・山本は少しタメ息が出た。
「モミジさん、失礼した。今度は建設的に話すと約束しよう。」
「はい、それではかけますね。」
「もしもし、カエデ?」
『お母さん、さっきの人なに?ヨシノブさん怒ってたよ。』
「ごめんね、さっきの人は官房長官なの、虫の居所が悪かったみたい、でも、もういないからもう一度ヨシノブさんに代わってもらえないかな?」
『う、うん、絶対に怒らせないでね。』
「わかってる、お願い。」
カエデはヨシノブと電話を代わる。
『なんでしょうか?』
ヨシノブの声には少し刺がある。
「先程はすまない、私は海上幕僚長の山本六十五という、ヨシノブさんに聞きたい事があって代わってもらっている。」
『自衛隊の方でしたか、話せる限りお話します。』
謝罪した事でヨシノブの態度がすこし変わる、やはりさっきの電話で怒っている所はあったのだろう。
改めて、身をただして話してくれる。
「まず聞きたいのは其処は異世界かね?」
『私はそう思っています。少なくとも地球ではないですね。』
「証拠はあるかね?」
『証拠ですか?うーん、難しいような・・・そうだ、これならどうですか?』
ヨシノブは手に20式5.56㎜小銃を取り出す。
『この世界に来てから出来るようになりました。自衛隊の装備なら呼び出せますよ。』
「なっ、それは私の指名した装備も可能かね?」
『出来ますね。』
「それなら9㎜拳銃を、」
ヨシノブは難なくだす。
その後も手持ち道具を言われるままに出した。
「し、信じられん・・・」
山本は驚いていた。
『えーと、これでいいですか?』
「ああ、君に特殊な力があることはわかった。
それで、君の保護した者は何人いる?」
『那須マイ、牧野カエデ、森脇ミキ、竹内ショウの四人です。
あと、那須タケフミは私の追放を画策したので庇護下から外しました。
それと前原コウキの死亡は確認しています。』
幕僚長達にザワツキが起こる。
話には聞いていたが実際に聞くと信憑性が上がった。
「四人の保護はよくやってくれたとしか言いようがないが、追放した者を庇護する事は出来ないだろうか?」
『それは難しいですね、自分を追放するように画策、扇動しましたので、せめて反省ぐらいはしてもらわないと。』
「それで、タケフミという子はどうなっている?」
『今は港でテントに住んでもらっています。
食事の提供もしてますので、死んだりはしていませんよ。』
幕僚長達はひとまず胸を撫で下ろす。
「気を悪くするかも知れんが一応確認だけさせてくれ。
君としては子供達をどうしたい?」
『出来る事なら日本に帰してあげたいですね。
こちらの世界は生きていくには辛いですから。
ですが、それと共に帰れない時に備え生きる術を身に付けて欲しいとも思っています。』
「それほど辛いのかね?」
『日本人にはですけどね、現地の人は普通に暮らしてますよ。
ただ、命の軽い世界と言えばわかりますか?』
「ああ、わかるつもりだ。」
『私は先程の力がありましたから、やっていけてますが、子供達は何も力が無いようですから。』
「君の力について教えてくれるかい?」
『私の力は自衛の力を得るとの事でしたが、どうやら自衛隊の装備を呼び出せる力のようですね。』
「自衛隊の装備かね?」
『そうですね。今いるのは船の中ですが、いずもを使わせてもらっています。』
「なるほど、事情はわかった。
しかし、連絡はなぜ取れる?」
『私にもわからないのですが、たぶんWi-Fiの意味がわからなかったか、通信ぐらいは許してくれる寛大な心か、ただの抜け落ちか、迷うところですね。』
「許すとは誰のことだ?」
『世界を管理する人ですかね。』
「君は神に会ったのかい?」
『神かどうかは知りませんが、お会いしました、それでこの力を貰ったんです。
まあ、其処は信じて貰えなくてもかまいませんよ。』
「いや、こんな不思議な力だ、私は信じよう。
それに必要な事は、どうにか帰国させる術がないかだな。」
『ええ、落ち着いたら調べてみたいとは思っております。』
「私達には君に頼むしか出来ないがよろしく頼む。」
『ええ、努力はしたいと思います。』
こうして最初の話し合いは終わったのだった。
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