第74話 マルコス後編

ヨシノブが来ると暴力が終わる。


彼は刺した俺を恨んで無いのか・・・

住人達に話しかけ、俺達に危害を加えないように伝えてくれる。


処罰ですら、俺の身を案じたものだった。

俺はなんて人を刺してしまったんだ・・・

俺に改めて罪の意識が重くのしかかる。

自分達が食べる為とはいえ、関係ない人を刺してしまうなんて・・・


俺達を保護するために船で生活することになる。

フィリアは船を見て何やら呟いていたが、

「じえいたい?」

それ以上何も言わなかった。


俺達家族に一室が与えられる、真っ白なシーツに替えの服が用意されていた。

そして、ベッドに横になる前に風呂場に案内される、兵士が汚すと洗うのが大変だからなと言っていたが、貴族でも無いのに風呂に入れるなんて・・・

俺達は綺麗になった後、部屋に戻る。


部屋に入ると既に風呂から帰ってきていたジェナとフィリアがいた。

ジェナは見違える程の美しさを持っていた。

えっ?なんで!いや、元々綺麗だったけど!

「お父さん、お母さん綺麗になったでしょ。これぞ美容液の力だよ!」

フィリアは嬉しそうにしていた。

こんな笑顔見たことはなかった。


翌日、フィリアはヨシノブさんに会いたいと言い出した。

しかし、俺達は罪人、いくら優しくしてくれているとはいえ、これ以上甘える訳にはいかない、俺はフィリアを諭すが

「大丈夫!絶対わかってくれるから!」

フィリアは聞いてくれない。

こんな事、今まで無かったのに!


それから暫くして、フィリアの姿が見えない。

迷子になったのかと思い船内を探し始める。

まさかとは思うが此処は男所帯の軍だ、年頃のフィリアが一人で歩いていて、何か合ったらいけない!


俺は船内を探す、人の良さそうな兵士にフィリアの居場所を聞いて回っていると甲板にいたと話を聞けた。


よかった、船倉に連れ込まれていたら危ないと思ったが、甲板なら大丈夫だろう。

俺は走り回って切れていた息を整え、甲板に向かった。

すると同年代と思われる女の子と話しているフィリアを見つけた。


この船にも女の子が乗っていたのか。

俺は一安心する、

「あっ、お父さん!」

フィリアが俺に気付いて手を振ってくる。

俺はフィリアに近付き、

「フィリア、勝手に出歩いてはいけないよ。すいません、娘が御迷惑をおかけしました。」

「いえ、そんな事はないです。それより、フィリアさんをヨシノブさんの所に案内するのですけど、お父さんも来ますか?」

「えっ?」

あまりの展開に俺は固まる。

まさか、ヨシノブさんはフィリアが狙いなのか!

俺は少ない頭で考えるが、これだけの兵を指揮する人の誘いであり、犯罪者でいくところの無い俺達だ・・・

断る事なんか出来ない・・・


絶望にうちひしがれながら、ヨシノブの元へと歩いて行く、

フィリア・・・不甲斐ない父を許してくれ・・・





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