第75話 転生者

俺の元にミキがマルコスさんと娘のフィリアを連れて来ていた。

「ミキちゃんどうしたの?」

「あのですね、このフィリアさん、転生者なんです!」

「へっ?」

俺はあまりの話に固まる。


「はい、私は元日本人です。」

フィリアも認めていた。

「まあ、そんな事もあるのか・・・俺も転生みたいなものだしね。

フィリアさんは受付を通ったの?」

「受付?いえ、私は気がついたらこの世界の赤ちゃんでしたよ。」

どうやら受付を通ったのは俺だけなのか、それともフィリアは記憶が無いだけなのか。


「良ければ死んだ時の事を教えてくれるかな?」

「いいですよ、私は令和○年○月○日に交通事故で亡くなりました。

死んだ当時はJKでしたよ。」

「あれ、その日って。」

俺が死んだ日も同じ日だった。


「その日がどうしたんですか?」

思わず出た声にミキが反応する。

「いや、俺が死んだ日と同じだと思ってね、偶然なのかな?」

「うーん、どうなんでしょうか?」

「まあ、考えても仕方ないか。」


「あ、あの、同じ日本出身ということで私と家族を保護してもらえませんか?」

俺とミキが話しているところでフィリアが声をかけてくる。


「勿論、保護するけど、ちょっと、行き違いがあってこの国だと厳しいかも・・・」

「国にこだわりはありません。出来たらこの船で暮らしたいぐらいです。」

フィリアはもう元の生活に戻れそうに無かった。


この世界では風呂に入る事はまず出来ない、水道もなければトイレすら不衛生だ。

転生してからずっと我慢してきてはいたが、船に乗り、日本の暮らしを味わうともう一度この世界に戻れる気はしなかった。


「こら、フィリア、ヨシノブ様に失礼だろ!すいません、何分娘はまだ子供なもので、どうかお許しを!」

ヨシノブにワガママを言うフィリアにマルコスは顔を青ざめながら謝罪してくる。


「マルコスさん、大丈夫ですよ。

これぐらいの頼み、全然平気ですから。

それに、袖擦り合うも、他生の縁といいますし、フィリアさん、家族の許可が出たなら一緒に行動してもいいよ。」

「ありがとうございます。」

フィリアは嬉しそうにマルコスを連れて部屋に戻っていった、きっとこの後説得するのだろうと思った。


「ヨシノブさん、結構日本人がいるのでしょうか?」

「うーん、どうなんだろう?

まあ、何か困っている人がいたら助けるとしますか。」

俺はあえて捜索するつもりはなかった。

困っていたら船まで来るだろうと思っていた。


「フィリア、ヨシノブさんに何を言っているんだ、私達が生きていられるのはヨシノブさんの寛大な処置のおかげなんだよ。」

「お父さん、大丈夫よ。

それにヨシノブさんの近くにいた方が絶対にいいから!」

マルコスはフィリアを諭すが聞いてくれない。

ここは母親に任せるか、俺はフィリアの説得をジェナに任せる。


「お母さん、私がヨシノブさんのそばにいる方が色々貰えると思うんだ。」

「それって、お風呂にあった美容液とか?」

「もちろん、それにお父さんに店を任せるって言ってたでしょ。

きっと、美容液とかも含まれるとおもうんだあ、ううん、無かったとしても私が交渉して、引っ張り出してくるわ。

その為にもそばにいる方がいいのよ。」


「でも、ほら、もしよ、もしも身体を求められたらどうするの?」

「・・・それは仕方ないかな?寵愛を受けれたら家族は安泰だし。」


「フィリア、あなたが犠牲になることなんてないわ。」

「あー心配しないで、たぶんあの人無理矢理したりとかはしなさそうよ。

どうみても善人だしね。

それに私の望みでもあるの、お母さん行かせて。」


フィリアの真剣な目にジェナは折れる。

ジェナと一緒にマルコスを説得する事に成功したフィリアはヨシノブと行動を共にするようになったのだった。

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