第71話 タケフミと父
Wi-Fi室に案内する事が出来た。
「この部屋なら電話が出来ます。テレビ電話で両親に報告するといいですよ。」
カエデは淡々とタケフミに伝える、
「カエデちゃんありがとう。
お礼に何かして欲しい事は無いかな?」
タケフミは下心満載にカエデを舐めるような見ながら言ってくる。
「ありません。では、失礼しますね。」
カエデは早くヨシノブの元に行きたくなっていた。
「ちょ、ちょっとカエデちゃん?」
自分に惚れていると思っていたタケフミはその冷たい対応に戸惑う、
しかし、カエデは止まることなく足早にヨシノブの元に向かって走っていった。
「照れてるのか?」
タケフミは自分の都合がいいように考えていた。
カエデは奥ゆかしい女の子だからな、いざとなると勇気が足りないのかも知れないな。
ここは年上の俺がリードするべきだったのか。
ありもしない妄想を重ねていたが、当初の目的である、親への電話を行う。
「もしもし、父さん?」
『タケフミか!無事なのか?』
「当たり前だろ、まあ、ヨシノブに嵌められて右腕は無くなったけど、生きているよ。」
『右腕が無くなったって!それにヨシノブさんに嵌められた?』
那須ユウキは息子の告白に驚きと涙が出る、そして、自分が何も出来ない悔しさに包まれていた。
そして、タケフミは今まであったことを話した。
「なあ、酷い話だろ、それに腕は治せないというんだぜ。」
タケフミは父に同意してもらいたかった。
自分が正しいと・・・
しかし、帰ってきた答えは・・・
『タケフミ、お前は思い違いをしているよ。』
「なんでだよ!何が!」
『ヨシノブさんに何も落ち度が無いじゃないか、
タケフミが決めてツバサくんに会いにいったんだろ?それを叶える為に国の使節団に紹介してくれた。
これが悪い事かい?
タケフミの望みに答えてくれているじゃないか。
それに、タケフミを助けに命を狙われている国にまで助けに来てくれたのだろ?
父さんとしてはヨシノブさんに何とお礼を言えばいいか・・・』
「な、何を言ってるんだ、俺は腕がなくなったんだよ?」
『それは父さんも悲しい、だけどそれはタケフミが選んだ結果だ、ヨシノブさんを恨むのは筋違いだ、
それにヨシノブさんと争ってどうするつもりだい?
マイもタケフミも行き先はあるのかい?』
「それは・・・」
『父さんもヨシノブさんと話したが、彼は信用出来ると思っている。
絶対彼を怒らせて追い出されるような事はしないでくれ。』
ただ、父親に認めて欲しかったタケフミには聞きたくない話しだった。
「父さんは俺にヨシノブのやつに頭を下げろと言うの!」
「もちろんだ、お世話になるのだから頭の一つや二つ下げないとダメだろ?
それにこの電話が出来るのも彼のおかげだと聞いている。
頼む、絶対にヨシノブさんには逆らわないでくれ。」
タケフミは自分が欲しくない答えに、呆然としながら電話を切るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます