第61話 ユリウスの苦難

勇者と聖女が呼び出された。

この事は世界に伝えられる。

しかし、ユリスの意識が戻らないユリウスの心境は悲しみにくれていた。


だが、ユリウスの悲劇は終わらない。


勇者と聖女2人が現れた事は不幸中の幸いだった。

まだ力は弱いが、今後成長すれば我が国の力になるだろう。

しかし、その事で各国から非難が来る。

本来、世界の危機に各国の同意の元、行われる筈の術だ。


これは女神トートが世界の危機に、人類が立ち向かえるよう術を授けてくれた時の約束として伝わっていた。


しかし、ユリウスとしては今回行った術はマルキーが開発した別の術であることを理由として、強行していた。

自国の事しか考えていない結果ではあるがユリウス自身は問題ないと考えていたのだが、

各国は違う当然、非難や情報公開、勇者と聖女の扱いについて問い合わせがくる。


中でもマインズ王国の使節団は既に到着していると報告があった、数日後には面会が予定されていた。

ユリウスにとって非常にめんどくさい話ではあった。



・・・しかし、その日が来ることはなかった。


勇者召還は元来行ってはならない秘術、世界の理に穴を空ける危険な術なのである。

それを歪めた形で発動させた事による揺り返しが来る事となる。


大震災である。


教会の魔法陣を中心に大地震が起きる。


「な、何事だ!」

ユリウスは恐怖に包まれる。

この世界で地震は珍しい事象であった。

トートの丁寧な世界管理が地震を起こさせないのである。

しかし、想定外の召還の歪みまでもはフォロー出来ていなかった。


地震により、城は半壊、町中の建物の多くが崩壊していた。

これにより治安は悪化、略奪、暴行が町中に広がった。


王都の治安部隊、軍も命令系統が遮断されており機能しない。


ユリウスとしても近衛兵に守られ何とか生きているだけであった。

その為、早々と家族や近習、大臣、勇者、聖女を連れて王都を脱出する。

王都にいても政治が出来ない為の非常手段だった。

王が脱出したことにより、多くの貴族も町から逃げ出す。

ある種の政治の空白地が生まれてしまったのだ。


王を含め貴族が多数いない事により、王都の政治は完全に沈黙する。

その為、この未曾有の災害に警備兵、軍も動かず、誰も指揮をとって救助活動をするものがいない、

犯罪行為を取り締まる者すらいなくなっていた。

みんなが自分や家族が生きるために勝手に動いていたのだ。


その為、治安は更に悪化した。


そんな中、ヨシノブ達は港に着いたのであった。

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