第60話 勇者召還の裏側

ローラン王国、ユリウス王は頭を悩ませていた。

軍が勝手にマルドラド王国に攻め込み、誤解を解きに行ったカクタス侯爵は喧嘩を売ってくる始末・・・

そして、国内の貴族は薬を求めて自分に要求してくる。


そんな中、司教に相談すると一つの答えをくれる。

勇者と聖女を召還しろと。


勇者の力でマルドラド王国を従え、

聖女の力で病を静めるのだと。


ユリウスにとって目から鱗が落ちる話であった。

その日から大司教の力で準備が進んでいく。

召還には色々準備がいる、


ユリウスは王家の蔵にしまわれている、宝玉に宮廷魔道師を集め魔力を充填させる。


大司教は教会の地下にある魔法陣に四人のシスターに魔法陣の四隅でシスターに祈りを捧げるように告げる


選ばれたシスターは言われるままに祈りを捧げる。

「えっ、なに?これ、待って・・・」

祈りを捧げると魔法陣に生命を吸い取られてしまう。

残されたのは灰になったシスターの残りと衣類だけであった。

そして、魔法陣は輝きだす。


この事は教会内でも、極秘であった。


本来、世界の危機に対して、身を捨ててでも世界を救いたいと願ったもの達が覚悟を決めて挑む儀式であった。

しかし、その身が灰になるということはあまりに残酷ということで公表していなかった。


「これで、私の名は後世まで受け継がれるであろう!」

大司教マルキーは自らの名を後世に残したかっただけである。


これまで、勇者召還を取り仕切った大司教は世界を救う手助けをした聖人として歴史に記載されている。


教会内で最高地位の大司教に就任してから聖人になることを考えたいた。

そして、願うなら誰もやったことのない。勇者と聖人の両者の召還。

これを成し遂げたら、自分は歴史上最高の大司教となるであろうと。


そんな思いを内に秘め、日々過ごしていると、召還のキーマンである、ローラン王国につけこむ隙が出来た。

乱れた世の中を正す為と甘い言葉をかけたら、ユリウス王は許可を出したのだ。


そして、魔法陣の起動に成功した。


数日後、ユリウス王が持ってきた宝玉を王妹ユリスが持って魔法陣の中央に立つ。

召喚にはローラン王国の王族の魔力が必要なのだ。


「ここでいいのですか?」

「はい、其処で宝玉を持っていてください。あとは私が行いますので。」


マルキーは大司教のみに伝わる召還の秘術に自分なりの改造を加えた、勇者と聖女の同時召還を行う。


大司教の予想通り、術は発動した。

このまま、勇者と聖女を捕まえれば済む話であった。

しかし、ここでイレギュラーが起こる。

勇者と聖女の距離が近すぎたのである。

本来一人を呼ぶ術を改造して2人を呼ぶ筈が、距離が近かった為、共振してしまい周囲の人まで連れてくるようになってしまった。

2人の定員の所に8人入ってしまったのだ。


足りない魔力は2人の生命力から補う事となる。


「なっ!なんだ、魔力が持っていかれる!」

「いや!なにこれ!お兄様!助けてください!」

マルキーとユリスの身体に異変が起こる。



2人とも身体がみるみる痩せていくのだ!

「ユリス!」

ユリウスは慌てて駆け寄ろうとするが、魔法陣の力で弾かれ近付けない。

近衛兵も救出しようとするが誰一人近付けなかった。

「たすけてくれ・・・わたしはこのようなところで死ぬ訳にはいかんのだ・・・

わたしは大聖人になる・・・」

術者であった。マルキーの生命力が先に尽きた。年齢もあり、生命力がユリスに比べて少なかったのだろう。


マルキーが死んだ事により術は停止した。

ユリスは意識を失い倒れこんだが何とか生きているようだった。


そして、魔法陣には2人の男女が現れたのだ。


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