第53話 Wi-Fi

ワイバーンを倒したあと、町の人達から熱烈歓迎を受けた。

そして、何故か俺を拝む者も出ていた為に、簡単に町を歩けなくなってしまった。


暇になったので艦内を散策することにした。

実はまだ全部の場所を回れていなかったのだ。

歩いているとWi-Fiエリアを見つける・・・

「もしかして、これって?」

俺は日本人を集めた。


「ねえ、誰か携帯持っている?」

カエデとミキは持ち物を没収されたようで首を直ぐに振った。

ショウは壊れたといった。

そんな中、マイは携帯を出してきた。

「私は持ってます、でも、電気切れてます。」

「大丈夫、USB端子とコードはあったから。取り敢えずみんなついて来て。」

俺はみんなを連れてWi-Fiエリアに来る。

「ここは?」

「Wi-Fiが出来るエリアみたいなんだけど、もしかしたら日本と繋がらないかなと思ってね。

もちろん、ダメ元だから、あまり期待しないで貰えるかな?」

充電しながらみんなに説明する。


「ヨシノブさんは試さなかったのですか?」

「俺は何も持たずにこの世界に来たんだ。

たぶん日本では死んでいるんじゃないかな?」

「えっ?」

「君達と此方に来た道が違うと言うことだよ、さて、最小限は溜まったかな?

マイちゃん、誰でもいいから連絡してみて。」


マイは緊張しながらも母親のミユキに電話をかける。

すると、直ぐにミユキが電話に出た。

『マイ!マイなの!』

「お、お母さん・・・」

マイは大粒の涙を流す。


『マイ、何処にいるの?無事なの?タケフミは?ねえ教えて!』

「私は無事だよ、お兄ちゃんも無事、親切な人に助けてもらって何とか生きてるよ・・・」

涙に詰まりながらも一生懸命伝える。


『じゃあ、いつ帰ってこれるの?お父さんも待っているのよ。帰ったらマイの好きな物用意するからね。』

「お母さん、ごめんなさい。帰り方がわからないの・・・」


『ちょっと、どういう事、ねぇ、教えなさい!』

マイは感極まって言葉が出ないので俺が電話を代わる事にした。


「すいません、事情を説明しようと思うのですが、落ち着いていただけませんか?」

『貴方は誰!マイに何をするつもり!』

「落ち着いてください、私はマイさんを保護した者です。」

『あっ、そうですか・・・失礼しました。

それでマイはいつ帰って来るのですか?』

「それが、マイさんも含めて私も日本への帰り方がわかりません。」

『それってどういう事?』

「信じられないと思いますが、ここは異世界なのです。」

『はぁ?こんな時に頭のおかしい事は言わないでくれますか?』

「残念ながら、本当なのです。

こうして連絡方法が見つかったのも偶然のようなものです。

後で異世界とわかるような物を写真に撮って送りたいと思います。

それを見て判断してください。」

『えっ、それって・・・』

「今はそういう物だと考えて話を聞いてください。これもいつまでも連絡出来るかわかりませんので。」

そこまで言うと電話の相手が変わった、


『私はマイの父親でユウキと言う、まずは君の話を聞こう。』

「ありがとうごさいます。

私は前田ヨシノブと申します。

たぶんそちらの世界では死んでいるのではないかと、思っているのですが、住所は・・・」

俺は生きてた頃の住所と職場について伝えた。



『わかった、それは後で確認する。』

「お願いします。

それで私が保護したのは、那須タケフミ、那須マイ、牧野カエデ、竹内ショウ、森脇ミキの五人です。

そのうち那須タケフミくんはツバサとユカリの名前を聞いて隣国に会いに行っています。」


『なんだと、タケフミが別行動をしているのか!なぜ君は止めなかったのだ!』


「どうも、私は嫌われているみたいで話も聞いてくれませんでした。

一応国の使節団の一員として向かいましたので、変な事をしなければ帰って来れるはずですが。」


『ハズとはなんだ!』

「落ち着いてください。他人の私が強制的に引き止める訳にもいかないでしょう。

此方は命の軽い世界なんです。

人の決定まで口出しする気はありません。」

『ぐっぬぬ!!』

ユウキは怒りでどうにかなりそうだった。

仮に話が本当だとしたら、タケフミは危険な場所にいることになる。


「それより、少し重い話がありますよ。」

『なんだと!それより、とはなんだ・・・いや、すまない、話を続けてくれ。』

怒りで怒鳴りかえそうとしたが、重い話と言われ聞くことにした。


「前原コウキという子はわかりますか?」

『タケフミの友人だな、うちにも来たことがある。』

「彼は亡くなりました。」

『えっ?』

「私が彼等の存在を知った時には既に亡くなられていました。

竹内ショウくんが確認しましたので間違いないかと。」

『そんな・・・』

「彼の家族に連絡を頼めますか?

あと、此方に来ている子達の親にも連絡していただきたい。」

『私にしろと言うのか、こんな話を誰が信じるのだ。』

「それは私の責任ではありません。

私はたまたま知り合ったので保護しただけに過ぎません。」

『わかった、なら、此処にみんなの家族を呼ぶ、それでいいか?』

「はい、それでいいで・・・あれ、電波悪いのか?おーい!!」

『おい、まて!もっと詳しくおしえろ!マイ、マイ!』

そういって電話は切れた・・・

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