第54話 親達の動き
電話が切れたあと・・・
ユウキはすぐにヨシノブが言っていた会社に連絡する。
「前田ヨシノブですか?彼は亡くなりましたよ、えっ?死因ですか?さあ、それはわかりません。」
会社に聞いても死んでいる事しかわからなかった。
だが、ユウキは警察官であった。
やってはいけない事だが、ヨシノブの素性を調べる。
確かに電話で言っていた事は嘘ではなかった。
話に信憑性が出てくる。
そして、ヨシノブの実家を訪れる。
ヨシノブの両親は既に他界しており、実家に住んでいたのは妹夫婦であった。
「何を言っているんですか!異世界って馬鹿にしているんですか!」
ヨシノブの妹、カオリはユウキの話を聞いて怒りだした。
「その気持ちは私にもわかります。ただ、君のお兄さんを名乗る人の元に娘がいて、彼が自分の身元を言っていたんだ。
そして、彼自身が異世界と言っている。
頼む!娘の為に彼の事を教えてくれないか?」
真剣な表情にカオリは折れ、ヨシノブの話をする。
彼は特に持病もなく、急に亡くなったそうだ、表情に苦しさもなく、詳しく調べたが原因が解らなかったとの事だった。
「これでいいですか?」
「ああ、ありがとう、次にかかってきた時はもっと真剣に話を聞ける。」
「えっ?連絡出来るの?」
「ああ、娘の携帯を使ってだが、電話がかかってきたんだ。きっと、またかかって来るはず。」
「私も行っていいですか?」
「頼めるかい、君ならお兄さんかどうかハッキリするだろう。」
「はい、ちょっと準備しますので少し待ってください。」
ユウキはタケフミ、マイの友達の家族にも声をかけ、説得し、みんなを集める、しかし、ユウキの家では手狭な為、話し合った結果、カエデの家に集まる事になる。
彼女の家は大富豪で家には充分にスペースがあった為、カエデの両親がみんなを招いたのである。
そして、いつ電話が来てもいいように、全員がカエデの家で世話になる。
可能な限り、カエデの家に滞在することにしていた。
カエデの母親モミジは家の電波環境を完璧に整えた。
メイド二人に電話を監視させ、取り逃しのないようにしていた。
最初の電話から一週間後、再び電話が鳴る。
『もしもし、お母さん?』
「マイ様ですか?私はカエデ様のメイドのルミでございます。」
『えっ?ルミさん?カエデー、ルミさんが出たよ。』
『ルミさん!私よカエデよ。』
ルミの家は代々カエデの家に仕えており、
カエデはルミの事を姉のように慕っていた。
「カエデ様!よくぞ御無事・・・」
ルミの目に涙が浮かぶ。
『うん、こっちで元気にしてるよ。でも、ルミさんに会えないのは寂しいよ・・・』
カエデの声が涙声になる。
「ルミ、かして、カエデ、お母さんよモミジよ!」
『お母さん!ごめんなさい・・・家に帰れなくて・・・』
「そんなことはいいの、カエデが無事ならそれでいいのよ。
酷い事はされてない?」
『うん、ヨシノブさんに助けてられてからは大丈夫だよ。
その前は奴隷としてお店に並べられてたけど。』
カエデの言葉にモミジの顔色が青くなる。
「奴隷って!貴女大丈夫なの?」
『うん、大丈夫なうちにヨシノブさんが助けてくれたの。
だから、お母さん、ヨシノブさんを酷く言わないでね。
ヨシノブさんが私達を誘拐したわけじゃないんだから。』
「わかったわ、それでヨシノブさんは?」
『近くにいるよ、其処にみんなの家族もいるの?』
「ええ、今ルミが呼びに行っています。」
『わかった、それまではお話出来るね。』
カエデはこれまでの事、他愛ない事を少し話していた。
「此方に人が揃ったわ、ユウキさんに電話を変わるわね。」
『うん、また電話するね。私もヨシノブさんに変わる。』
その言葉に次の電話がある事がわかった。
カエデは那須ユウキと電話を代わりヨシノブとの話し合いを始める。
「ヨシノブさんですか?」
『はい、ヨシノブです。』
「貴方の確認をした所、妹さんに来て貰いました。」
『えっ、カオリにですか?ちょっといきなり消えてしまったから合わす顔がないんですけど・・・』
「お兄ちゃん!何を言っているの!」
『カオリ!』
「こっちはお兄ちゃんが死んで大変だったんだから、連絡出来るならしてきなさいよ・・・」
『いや、俺は死んでこっちに来たようだから、携帯なんて持って無かったんだよ、たまたま、マイちゃんが持っていたから電話出来ているだけだよ。』
「それでも、連絡の仕方あるでしょ?」
『いや、最近このやり方に気づいたんだ、それより、ユウキさんに代わってくれよ。
子供達を保護しているから彼等に説明責任はあると思うんだ。』
「ほんと、お兄ちゃんはいつもそうだよね。
自分の事は後回しにしてさ!」
『まあまあ、大事な事なんだ、代わってくれ。』
カオリは渋々ながら電話を代わる。
「よかったのですか?」
『ええ、話せて嬉しい所ですが、今は子供達の事を優先したいと思っています。』
その言葉にヨシノブの人柄が見える。
そして、何処か誘拐犯ではないかと疑っていた自分を恥じる。
『えーと、私の身元はわかったと思います。』
「信じられないがそのようだ。」
『連絡についてですが、一週間に一度連絡が出来るようです。
たぶん今後も続けれるとは思いますが、此方にアクシデントがあった場合は出来ないかも知れません。』
「アクシデントとは?」
『色々ですね、この設備が使えないタイミングとか、子供達と離れていたしまった時、後は私が死んだ時ですかね。
この設備事態、私の力で出来ていますので。』
「つまり、絶対ではないと。」
『はい、残念ながらそうなります。』
「わかった、子供達は今は安全なのだな?」
『タケフミくんとツバサくん、ユカリさんはわかりませんが、他の子供達は今は元気にしています・・・よ。』
「今の間はなんだい?」
『いえ、ショウくんは私が見つけた時に足のスジが斬られておりまして、先日手術をしたのですが多少後遺症が残ってしまいましたので、元気と言っていいか迷っただけです。』
その事場にショウの母親は顔が青くなり倒れる。
「それ程危険な場所なのだな?」
『はい、表はともかく裏路地などは危険ですね。』
「改めて子供達を保護していただき感謝します。」
『いえ、大人としては当然と思ってます。』
「君は素晴らしい人柄だ、此方で何か出来る事はないか?」
『・・・無いですね、物資の輸送も思い付きませんし、連絡はこのマイさんの電話だけですから。』
「・・・一つ聞きたいが、マイの携帯が壊れたらどうなる?」
『・・・言いにくいのですが、連絡が出来ないかも知れません。』
「何とかならないのか?」
『此方の世界は魔法があるとはいえ、中世ヨーロッパぐらいの文化水準です。
壊れた携帯を直す術はありません。』
「そんな・・・」
言葉を失うユウキからルミは電話を奪う。
『ヨシノブ様、この電話をテレビ電話に出来ませんか?』
「ああ、出来ると思います。少し切りますね。」
ヨシノブは一度切り、すぐにかけ直してくる、
画面の向こうにいる姿は服装こそ違えど其処に子供達がいた、
各自の親は全員子供の名前を呼び、子供達と面会が叶う。
互いに涙を流して喜んでいたが・・・
画面が乱れて消えてしまった。
親達は一度解散して各自、家に戻る事になる。一週間後、また集まる約束をして。
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