第41話 日本人
「自衛隊?」
周囲の兵士は困惑している。
しかし、俺は返事をする。
「いや、俺は自衛隊じゃないけど、君は?」
「俺は那須タケフミ、日本人だ。あんたも日本人なんだろ?」
俺はタケフミをよくみる、彼は14歳ぐらいの少年で、着ている服は学生服のようだが、所々やぶれている。
「俺は前田ヨシノブ、確かに日本人だよ。」
「なあ、保護して貰えないか?せめて、何か食べ物を分けてくれないか・・・もう何日も食べて無いんだ・・・」
タケフミの腹が大きく鳴る。
「ああ、同郷のよしみだ、保護するのはいいが話は聞かせてくれよ。まずは食事だな、誰か何か買ってきてくれないか?
簡単な物を食べさせたら船に向かう。」
俺の声に護衛の一人が走っていった。
「食べたら向かうけどいいかい?」
「ま、待ってくれ、妹がいるんだ、一緒に連れて行ってくれ。」
「わかった、妹さんは何処に?」
「この先の路地にいる。」
俺はタケフミを抱えて、路地に行くと、一人の少女が座り込んでいた。
「だ、だれ?」
俺と目が合うと少し震えていた、どうやら怖い思いもしてきたようだ。
「大丈夫だ、俺は前田ヨシノブ、日本人だよ。」
「日本人なの?本当に?私、助かったの?」
「助かったというのは微妙かも知れないが、これから飢える事はないと約束するよ。」
丁度、兵士がパンと飲み物を買って来たので二人に食べて貰い、船に向かう。
「これって、自衛隊の船?」
少女は船を見て呟いていた。
二人に食事と風呂に入って貰い、少し大きいが、自衛隊の服を着て貰った。
そして、落ち着いた頃に話を聞く。
この場にいるのは俺とサリナ、タケフミと少女であった。
「改めて、前田ヨシノブだ、この艦の艦長でもあるけど自衛隊ではないんだ。スキルで出来てるといえばわかるかな?」
「わかります、異世界転移ですよね!」
タケフミは少し興奮気味に話す、年頃かこういった話は好きなようだ。まあ、彼自身もそうなっているのだが、
「お兄ちゃん、落ち着いて、
えーと、私は那須マイです。13歳です。気がついたらこの街にいて、何が起きているのか全くわからないのです。
何かわかることがあれば教えて貰えませんか?」
どうやらマイの方が落ち着いて考えれるようだ。
「俺は此方に来るとき、受付を通って来たが
君たちは?」
「受付?何ですかそれは?私達は学校の帰り道で友達達と帰っていたら急にこの街にいたんです。」
「その友達は?」
「会っていません、お兄ちゃんだけが近くにいて・・・」
「そうか、それが何日前かわかるかい?」
「3日前です。」
苦労を思い出したのか、マイは泣きそうになっていた。
「大変だったね、君達、ステータスオープンって言ってみてくれないか?」
「えっ、えーと、もう言いました、でも、何もおきませんでした。」
タケフミはどうやら既に試していたようだ。
「そうか、ならたぶんスキルは得て無いんだな。」
「ヨシノブさんは出るんですか?」
「ああ、あまり意味があるかはわからないが階級が表示される、あと、呼び出す装備も選べるかな。」
「他にも呼べるのですか?」
「自衛隊の装備なら呼び出せる。」
「凄い、チートじゃないですか!」
「そうだね、お陰で無事に暮らせているよ。」
浮かれ気味なタケフミと違いマイ少し考え込んでいた。
「ヨシノブさん、私達に仕事をくれませんか?」
「マイ?どうしたんだ?」
タケフミは意味がわかってないようだった。
「だって、此処に置いて貰わないと、私達行くところが無いんだよ。
でも、何もせずにずっと養って貰う訳にはいかないでしょ、それなら何か恩返しさせて貰って、置いて貰わないと。」
やはり、マイの方がしっかりしているようだった。
「でも、ヨシノブさんなら養ってくれるよね。」
「お兄ちゃん!そんな図々しい考えはやめて!ごめんなさい、ヨシノブさん。」
「いや、タケフミくんの気持ちもわかるよ、まあ、君達子供を放り出すような真似はしないから、でも、俺の言うことは聞いてくれるかな?」
「はい!何でもします!」
「マイちゃん、女の子が何でもしますとは言わない方がいいよ。」
「でも・・・」
「出来ることをしてくれたらいいから、取り敢えず、サリナさんの手伝いをしてくれる?サリナさん頼めるかな?」
「はい、わかりました。マイさんのお部屋は私の近くで良いですか?」
「それでいいかな?」
俺はタケフミとマイに聞く。
「はい、それでお願いします。」
しかし、タケフミには不満のようだった。
「マイ、一緒の方が・・・」
「お兄ちゃん、男女は別れているのが普通よ、それに同じ艦内なんだから何時でも会えるでしょ。」
マイの正論にぐうの音も出ない。
「タケフミくんは将来何をしたいか考えてみるといいよ、この世界、生きていくには辛いだろうから、今のうちに学べばいい。」
「えっ、養ってくれるのでは?」
「いや、いつまでもは無理だし、それに俺が死んだらどうするんだい?」
「えっ?」
「俺だっていつ死ぬかわからないし、それに未来永劫保護してあげられないからね。」
「すぐにどうこうなる訳じゃないけど、生きていけるように何か身につけた方がいいと思うよ。」
俺の言葉に思う事があるのか、タケフミは黙って考えるのであった。
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