第14話 旅立ち
王都から脱出した俺は全速力で逃走していた。
現在追手の騎兵の姿も見えず、
ひとまずモス子爵領を目指し進んでいる。
「ふぅ、これで撒けたか。」
「はい、しかし、これは何なのですか?」
「俺のスキルで呼び出せる物は色々あるんだ、治療所はその一端なんだよ。」
「凄いです!しかし、これからどうしましょう?」
サリナは今後を心配している。
「うーん、水と食料はスキルで呼び出せるし、燃料も減ってないな、これならいくらでも逃げれるが・・・
取り敢えず、リザークさんの所に行くか。
サリナさんの事も説明しないといけないし。」
「お父様ならわかってくださいます。
でも、いいのでしょうか?
私達はお尋ね者ですよね?
お父様に迷惑はかからないか心配なのですが・・・」
サリナの表情は暗くなる。
「連絡より早く向かえばいいだろう。そしたら、話し合う時間は持てるはずだ。」
「でも、此処からだと馬車で七日はかかります。」
「だから、もっと早く行く手段に変えるよ。」
俺は戦車を止めて一度外に出る。
そして、戦車の代わりにヘリコプターを呼び出す。
呼び出したヘリコプターは戦闘用ヘリコプターAH-64Dだ。
ミサイル、機関砲を搭載しており、攻撃力もあり、赤外線暗視装置もついてあるので夜間も飛べる。
最速で向かうには適切だと考えていた。
「そ、空を飛んでますよ!」
サリナは恐怖で俺にしがみついている。
「大丈夫だ、さあ、向かうよ。」
俺はディスプレイに表示された地図を見ながら飛んでいく。
どうやら、地図は俺が通った所が表示される親切設計になっている。
だから、俺は地図を縮小して、真っ直ぐモス領を目指す。途中山が見えるがひとっ飛びだった。
「や、山の上ですよ!えっ、雲が下にあります!」
サリナは到着までずっと混乱したままだったが、直線距離で来た為、圧倒的に早くついた。
俺は町の近くに着陸した後、バイクに乗ってリザークの屋敷まで向かった。
「リザークさん。」
「おお、ヨシノブさんどうしましたか?サリナもぐったりしているようだが?」
「お父様、私、空を飛んでしまいました・・・」
「サリナ?何を言っているんだ?」
リザークはサリナの言葉にわからないといった表情を浮かべている。
「リザークさん、それはいいのです。
それより、話があるんです。」
俺は現在王都から逃げ出して来たことをつげる。
話終わる頃にはサリナも回復しており、事情説明にくわわっていた。
「なんだ、それはヨシノブさんに悪いところなど無いではないか!」
「それでも、王が命じれば白いものも黒くなるでしょう。
それで私はこの国から逃げようと思うのですが、リザークさん、いやモス子爵としてはいかになさいますか?」
俺の言葉に被せるようにサリナも自分がついて行くことを伝えた。
「お父様、私もヨシノブさんと一緒に行きます。
私の事は死んだと報告してください。」
「・・・わかった。本当ならサリナとヨシノブの無実を訴える立場なのだろうが、子爵の私が言ったところで変わる物ではなさそうだな。
ヨシノブさん、娘をどうぞよろしくお願いします。」
リザークは深く頭を下げていた。
「私のせいでサリナさんを巻き込んでしまい申し訳ないです。
必ずやサリナさんを守り抜きますので安心してください。」
俺はリザークにサリナを守る事を誓う。
「それで何処を目指すつもりだ?」
「そうですね・・・何処でもいいのですが、オススメの所とかはありますか?」
「ならば、北に向かい、マルドラド王国に行ってみるのはどうだろう。
妻の父でサリナの祖父にあたる者がラードという町で商売をやっている、行ってみるのはどうだろうか?」
「そうですね、向かってみます。」
リザークの顔に寂しさが浮かんでいる。
「すぐに行くのか?」
「いえ、今晩はお世話になっていいですか?」
直ぐに出た方がいいのだろうが、
俺はリザークとサリナが別れの時間を作ってあげたかった。
「ありがとう、今宵は二人の壮行会をしようではないか。」
リザークは領民も集め、盛大な宴を開く。
事情は知れ渡っているが、世話になったヨシノブを売ろうと考える者は誰もいなかった。
別れに涙を流し、旅立ちの無事を祈り、二人を祝して、宴を盛り上げていた。
俺とサリナはモス領の領民との別れを惜しみながらも翌朝、隣国マルドラドに旅立つ、
二人を見送りに領民全員が町の外まで出てきて手を振っていた。
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