第13話 思惑
ヨシノブが脱出した頃、城は大混乱を起こしていた。
「城門が破壊されただと!」
爆音と共に門が破壊された事がユリウス王の元に知らせが届く、そして、それを行ったのが平民の医師ではないかという話であった。
「スコール公爵、どういう事なんだ!」
「私にもわかりませぬが、どうやら陛下がお出しになった使者がヨシノブを怒らせたのでしょう。
まさか、あのような力を持っておるとは・・・」
「怒らせたとはどういう事だ、私は慰謝料を払う使者を出しただけだぞ、たとえ金額に納得が出来なかったとしてもこれはあまりに短慮ではないか?」
ユリウス王にしては怒らせるつもりは無かった。
混乱している最中、アレクの元に屋敷からの連絡が届く。
「陛下、私の家の者が聞いた所によりますと、金貨百枚を這いつくばって受けとれと申し出たようでございます。
これの何処に謝罪の意味があるのでしょう?
何かの冗談のおつもりか!」
「なっ、なんだ、その態度は私が命じた訳ではない。
それに金貨百枚とは何の事だ、私は白金貨5枚を渡した筈だ。
いや、それでも門を壊していいわけが無いであろう。」
ユリウスは使者の態度を否定しつつも門を破壊したことを責める。
「騎兵に追いかけられ、門を閉められたのです、致し方ないのでは?」
「そのような指示は出しておらん!」
「それでも軍が動いたことは間違いないようです。
一使者ごときが軍を動かした事は大問題ですな、私はカクタス侯爵と陛下が起こした問題について、貴族院にて追及したいと思います。」
この国では、国王が間違った事をしないようにするため、貴族院にて国王ですら処罰、最悪は退位を求める事が出来るようになっていた。
「なっ、スコール公爵、貴方は私の支持者ではないのか!」
「私の庇護を受けている者を一方的に貶める者を支持する気はございません。
そして、かの医師は多くの令嬢を助けております。
この国の貴族で恩を感じる者がおれば、私に賛同する事でございましょう。」
「な、なんと・・・それほど支持者がいるのか?」
ユリウス王は驚きと退任の恐怖を感じていた。
そこにユリスがやって来た。
「お兄様、話を聞きました、何故処罰なさらなかったのですか!
私はお願いしましたよね!」
ユリスは咳き込みながらもユリウスを責める。
「ユリス、落ち着け、病気が悪くなる!」
「落ち着いていられますか!お兄様は・・・私の恩人に何を・・・」
ユリスの咳が酷くなる。
ユリスと一緒に来ていた侍女がユリスに咳止めの薬を持ってきて、一息つく。
「ユリス、落ち着いてくれ、わかったから、ちゃんと謝罪をするから」
「本当ですよ。」
苦しそうなユリスの顔を見るのは心が痛かった。
そして、自分のしたことの間違いに気付く。
「スコール公爵よ、私はその医師に・・・ヨシノブと言ったかな?彼に謝罪したいと思う。」
「はい、それが良い事だと、思います。」
「誰かある、ヨシノブ医師を捜してくるのだ。」
「ハッ!陛下の仰せのままに。」
近衛兵は命令を軍務大臣に伝えにいく。
「何?陛下が今日、門を破壊して逃走した男を捜し出せと。」
「はっ。」
「やはり陛下はあの不可思議な物を問題視しておるのだな、よし、偵察隊を増員せよ、良いか、どのような攻撃をしてくるかわからん、くれぐれも慎重に探すのだ。
なお、いつ出撃してもいいように各師団には準備を怠るなと伝えるのだ。」
軍務大臣は各師団の偵察隊を総動員して捜索にあたる。
そして、あの兵器を破壊し、男を捕縛するために。
王と軍務大臣の認識が違っている事に誰も気付いていなかった。
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