第15話 ラードの町

「いい人達だよね。」

俺はモス領の人達を思いながらヘリを飛ばす。

「ええ、みんな良い人達です。」

少ししんみりしながらモス領が見えなくなっていく。


「サリナさん、ラードってどんな町なの?」

「はい、ラードはマルドラド王国の港町で、交易で栄えていて、見たことの無いもので溢れていますよ。」

「へぇー面白そうだね、サリナさんは行ったことあるんだよね?」

「ええ、おじいさまがいらっしゃるので幾度か、あと、父が経済援助のお願いに・・・」

「モス領って、経済まずいの?」

「いえ、そのような事は、ただ、不作のおりに何度かおじいさまの商会に援助を求めたそうです。」

俺とサリナが話していると、ラードの町が見えてくる。


「町が見えてきたよ。」

「早いです。何日か、かかる筈ですのに。」

「途中、高い崖もあったみたいだし、大きく回ればそうかもね。」

サリナはヘリの早さに改めて驚いていた。


俺達はヘリを町の手前におろし、高機動車に乗り換え、町を目指す。


「ローラン王国モス子爵の娘

サリナです、祖父ルーカスに会いに来ました。」

門で呼び止められた所、サリナが名乗る。


「これは失礼しました、珍しい馬車の為に呼び止めた事をお許しを。」

「ええ、自慢の少し特殊な馬車なんです。

ただ、今回はお忍びなのでどうか来たことを広めないでください。」

「わかりました、しかし、領主に伝える事をお許しくださいませ。」

「それはわかってます。

ルーカス商会に向かいますので何かあれば連絡をお願いします。

それで通っても宜しいかしら?」


「はっ!ラードの町にようこそ。

ごゆるりと滞在なさってくださいませ。」


俺達の車の通過の許可がでた。


「サリナさん、名乗ってよかったのかな?」

「大丈夫ですよ、此処は隣国、ローラン王国ではないのですから。」

俺は名乗った事でリザークやモス領に迷惑がかからないか心配していたが、サリナの話だと訪問が伝わる事はないとの事だった。


そして、ルーカス邸につく。

ルーカス商会はラード、一の商会であり、マルドラド王国でもトップ10に入る大きな商会らしい。

その為、屋敷も貴族に負けない大きく、豪華なつくりとなっていた。


「サリナが参りました、おじいさまに伝えて貰えますか?」

「お嬢様!ただいま伝えて参ります。」

メイドが急いで奥に向かう。


しばらくして・・・

奥から爺さんが走ってくる。


「サーリーナー!!よく来た!!」

サリナ飛び付くように抱きつこうとするが、サリナが手で制止する。

「おじいさま、もう子供でないのですから、そのような真似はなさらないでくださいませ。」


「何を言うか、サリナはいつまでもワシの孫じゃ。

ほれ、おじいちゃんだぞ。

もっと甘えてもよいのだ。

そうだ、サリナの為に首飾りを用意しておったのだ、きっと気に入ると思うぞ。」


「それはいいですから、話を聞いてください。」

一度客間に通され、

サリナは今までの経緯をルーカスに伝えた。


「なんだと!サリナが肺病にかかっておっただと!

これはいかん、直ぐに治療をせねば!」

「おじいさま、大丈夫です、先程も言いましたが、こちらのヨシノブさんに治していただきましたので。」


「そうなのか、それはかたじけない。

・・・しかし、些かサリナと距離が近くないか?」

「ですから、先程も伝えましたが、ヨシノブさんは私の大事な人で、二人で王都から逃げて来たのです。

どうか、おじいさまの元でかくまってくださいませんか?」


「あらあら、それはそれは・・・」

にこやかに笑いながら老婦人が現れる。

「おばあさま!」


老婦人、サリナの祖母マーナは俺に挨拶をした後サリナと話を始める。


「サリナもいい人を見つけたのですね。

わかりました、いつまでもいて良いのですよ。

そうだ、二人の家を建てましょう。

それがいいわね。」


「お前、勝手に決めるな。

サリナにはまだ早い!」


「そんなこと言って、こんな機会ありませんよ。

折角サリナが此処に住んでくれると言うのですから。」


「おばあさま、頼んでおいてどうかと思いますが、宜しいのですか?私はローラン王国に追われているのですよ。」


「大丈夫です、あの国は我が国に攻める力などありませんし、ルーカス商会は王国でも指折りの商会です。

その次期当主を明け渡す真似を陛下がなさる筈がございません。」


「次期当主?」

サリナはキョトンとした目をしている。


「ええ、私達の孫はサリナだけですからね。私達が蓄えた物は全てサリナの物ですよ。」


「えっ、おばあさま、聞いた事もなかったのですが、ルーカス商会は他の者に任せるのでは?」


「そんなことしませんよ、元々リザークからサリナに渡すつもりでしたが、

折角私達の手元に来てくれたのですから、私達の老後は可愛い曾孫を見ながら、サリナが頑張る姿を見せてちょうだい。」


「曾孫?おばあさま・・・そんな、まだ・・・」

サリナは顔を赤くしながらモジモジしている。


「あの、俺とサリナさんはまだそんな関係ではないのですが。」


「あら、まだでしたの?まあそれは些細な問題ですわ。

それともサリナに御不満が?」


「いや、サリナさんに不満なんてありませんよ。俺の方が未熟者ですから。」

「そんなことありません!ヨシノブさんは素晴らしい人です!」

サリナは俺をフォローするが、

「あらあら、仲がいいことですね。」

マーナはニコニコして、俺達を見ていた。

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