第11話 ユリウス王とスコール公爵

「スコール公爵、此度は災難であったな。」

アレクは自然災害にあったかのような、その言葉に引っ掛かりを覚える。


「陛下、私としましてはしかるべき処分と以後このような事が起きぬようにすることが大事に思いますが。」

言葉に少し怒気がこもるのは仕方ない事であろう。


「スコール公爵、落ち着け。

私もしかと調査を行った。此度の事はカクタス侯爵家の次男イスマル・カクタスに問題があったと理解しておる。」


「そうでございますか。それならば処分はいかようになりますか?」

「うむ、カクタス侯爵家に白金貨五千枚の拠出と次男イスマルの無期限の謹慎を言い渡す。」

白金貨とは一枚で金貨千枚の価値が有り、莫大な罰金となるが・・・


「・・・陛下、それは軽すぎませんか?被害を受けた者が納得するとでも?」

「モス子爵には私から事情を説明し、慰謝料として白金貨百枚を送っておる。

あと、娘の嫁ぎ先については口利きも行う。

そして、スコール公爵よ、そなたの別宅が襲撃されて怒っておるのはわかるが、此処は堪えてくれぬか?

今カクタス侯爵を潰す訳にもいかんのだ。」


現在、カクタス侯爵家当主、オスカル・カクタスは隣国マインズ王国に通商条約を結びに行っているが、これは国の財政を回復させる、大事な交渉であり、

オスカル、個人の繋がりをも最大限利用した交渉であった。

その為、今、オスカルを外す訳にも、まして、機嫌を損なう訳にもいかなかった。


「しかし、陛下、信賞必罰は大事な事にございます。

どうかご再考願えませんか?」


「スコール公爵、頼む、此処は呑んでくれないか?」

ユリウス王が頭を下げ頼む姿にアレクは引かざるおえなかった。


「・・・わかりました。私はそれで宜しいですが、

当事者たるヨシ・・・医師にはいかようになさるのですか?」


「医師か?その者は平民なのであろう。白金貨五枚を渡してある。」


「陛下、ご再考ください!あの者こそ失う訳にはいかない人材にございます。

それに金銭で靡く者でもございません。」


「何を言う、たかが平民の医師ではないか。」


「たかが医師に肺病の薬を用意出来ますか!

あの者は聖人たる人物にございます。

最大限の礼を持ち、対応する必要がございます。」


「大袈裟な、スコール公爵、治療については聞き及んでおる、ただ薬を渡しておるだけではないか。

それならば、その薬を研究すれば良いだけだ。」


「陛下!私は妻も娘も助けられているのです。

そのような恩知らずな真似は容認出来ませぬ。」


アレクは必死に訴えるも、ユリウス王からすれば平民の医師が作った薬ぐらいすぐに出来ると考えており、サンプルになる薬は既に色々な者が大量に入手している。

研究に使う分には困らないと考えていた。

その為、ヨシノブ自身の価値を低く見ており、アレクとの間に大きな温度差があった。


「スコール公爵様、御屋敷より至急の使者が参っております。」

近衛兵が連絡に駆けてくる。


「至急の連絡だと・・・内容は?」

「はい、医師ヨシノブが屋敷を出ていったとの事にございます。」

アレクは目の前が暗くなった。

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