第10話 王妹ユリス
「ここが治療所ですか?」
王妹と聞いていたから年配の方が来ると思っていたが、来たのは15歳ぐらいの少女であった。
「ユリス様ですか?私は治療を行うヨシノブと申します。」
「ヨシノブですか、私がユリスです。
この度はよろしくお願いいたします。」
ユリスは少し咳き込みながら挨拶をかわす。
そして、診察、薬の説明を行う。
診察が終わった後、ユリスが聞いてくる。
「今日のこの警備は非常に厳重ですが何か合ったのですか?」
「昨日、私がカクタス侯爵家より襲撃を受けましたので、スコール公爵に身をよせ匿って貰っているのです。」
「なんと!王都にて襲撃事件を起こすなどとは、私の口から兄にも伝えておきます。」
ユリスは憤慨していたが、
「ユリス様、落ち着いてください。体にさわります。」
「失礼しました、でも、ちゃんと兄に伝えて、処罰することを約束致します。」
「ええ、それはお願いします。
このままだと、この国にいるのも難しくなりそうですから。」
ユリスは真剣な顔をして俺の肩を掴んでくる。
「必ずや、カクタス侯爵家に責任をとらしますので、早まった真似だけはなさらないようにお願いします。」
「は、はい。」
あまりの勢いに負けてしまった。
そして、診察が終わり、ユリスは帰って行った。
ユリスは帰ってから兄の国王ユリウスに頼み、カクタス侯爵家について調査、処罰をお願いしていた。
するとすぐに前日のヨシノブ襲撃が浮かび上がってきた。
ユリウスは妹の頼みもあり、調査を開始する。
調べによると、次期当主の座を狙ったイスマルの単独の犯行だった。
貴族間で噂になっている治療薬を独占することで、自らの地位を上げ、兄ラスカルに代わり侯爵家を継ぐというお粗末な計画であった・・・
報告を聞けば聞く程、ユリウスは頭を抱える。
上級貴族で学をつけているはずなのに、どうしてこんな愚か者がでてくるのだ。
この責任を問いたくとも現当主オスカルは外務大臣を任せている。
彼は若い頃から、外遊をしていた為に他国に知人が多く、優秀な大臣でもある。
失脚させると代わりがいない。
そして、嫡男、ラスカルも文武に優れ、いずれは大臣になるであろう逸材である。
こんな事でカクタス侯爵家を失う訳にもいかない。
そして、ユリウスの中に一つの考えが浮かんだ。
幸い、イスマルはまだ生きている。
オスカルとしても息子が死んだら許せなくなるかも知れないが、
王都にて兵を動かし襲撃をするなど前代未聞の罪だ、死罪を免れるだけでも王家に感謝するであろう。
多額の献金で死罪を免じて、当人は蟄居処分にいたそう。
娘を襲撃された、モス子爵には、見舞金と私の書状をつけて穏便に済ますように手配するか。
あと、医師だが・・・スコール公爵の庇護はあるが平民か。
ならば、問題あるまい。
こちらも見舞金で良いであろう。
スコール公爵には説明せねばならぬな、まあ、スコール公爵も国政に携わる者だ、カクタス侯爵を今外す訳にもいかんことは理解しておろう。
ユリウスは自身の財貨から見舞金をだす手筈を整える。
襲撃から3日後、ユリウス王はスコール公爵を呼び出した。
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