第9話 逃走
「お待ちを、スコール公爵様にお伺いをたてないと。」
執事は俺を引き止めようとするが、
俺は聞く気はなかった。
「侍女、執事達は好きにしろ、安全が確保出来てない以上、少なくとも事態が解決するまでは戻らん。
以後の治療も断らして貰う。」
「そんな!困ります、明日は王妹ユリス様がお越しになるのです。せめて診察を!」
執事は、慌てた様子で訴えかけてくる。
「聞いてないな。
それに襲撃を受けるような場所に王妹様を連れては来れないだろ。」
俺は翌日の予定も伝えていない執事にイラつく・・・
そもそも、何故こいつは無事なんだ?
執事なら来客に対応すべきではないのか?
襲撃されてケガをしているならまだしもこいつは無傷である。
そして、屋敷の警備はどうなっていたんだ?
考えだすとこいつが怪しく見えてきた。
「まあ、いい。このまま此処にいてもいいし、スコール公爵の元に行ってもいい。
勿論、カクタス侯爵の元に行くのもな!」
俺は執事に鎌をかけてみた、すると、あっさり表情が変わる。
侍女も執事の表情に全てを察する。
執事が裏切っていたのだ。
「なるほどね、それが答えか。
ならば俺が気にする必要はなさそうだ。
じゃあな。」
「御待ちを!私達も連れていってくださいませ。」
侍女達は俺にすがってくるが、
「悪いが誰が信じれるかわからんからな、裏切っていないならスコール公爵の元に行き、事実を話せ。
俺が言うのはそれだけだ。」
俺はサリナを連れて屋敷を後にした。
「よろしかったのですか?」
サリナは残された侍女を心配しているようだが、
「ああ、今は誰が裏切っているかわからない。
いくら安全な所に入っても裏切られたら終わりだ。
せめて今夜は信じれる所にいよう。」
装甲車を呼び出す。
「さあ、狭いけど中へ」
サリナを中に入る、
中には後部座席がベンチシートになっている。
「狭くて悪いが、今晩は此処で寝てくれ。」
「はい。」
俺は車を動かし、町の広場に向かう。
夜とはいえ、町の真ん中だ襲撃しにくいだろし、
それに装甲車だ、簡単には開けられる事は無いだろう。
その夜、俺は運転席で寝た。
翌朝、車の周りには人が集まっている。
「ヨシノブさま、周囲に人が。」
「ああ、わかってる。少し動くか。」
俺はゆっくり出発する。
そして、町の郊外に出る。
そして、俺は朝食を用意する。
「あの、私も手伝います。」
サリナが手伝いを申し出るが、レトルトを呼び出して温めるだけだった。
「うう、私料理得意なんですよ。」
恨めしそうな顔で俺を見てくる。
「ごめんよ、でも、簡単なんだよ、他に食材無いしね。
また今度作ってもらえるかな。」
「わかりました、絶対ですよ!」
俺はサリナと約束を交わして、朝食とする。
メニューは炊き込みご飯とハンバーグ、ワカメスープだったが、
「美味しいです。このご飯というものの味付けはいったいなんなのでしょう?食べたことがない味です。」
サリナは醤油を知らないようであった。
朝食を食べ終わったあと、アレクが兵士を連れてやってきた。
「ヨシノブ殿、此処におられるのか?」
「アレク様、あなたが用意した執事が裏切りました。
一つお聞きしたい、貴方の指示ですか?」
「我が家名にかけて、そんなことは無いと誓おう。
だが、私が用意したものが裏切ってしまった事も事実。
どうか謝罪を受け入れてもらいたい。」
俺は装甲車から出る。
「アレク様、貴方を信じましょう。しかし、カクタス侯爵ともめる事になりました。
王都から離れようと思うのですが。」
「ま、待ってくれ、せめてユリス様を診察してもらえないだろうか?」
アレクは困った表情を浮かべている。
「・・・わかりました。ただ、安全を考えてアレク様の屋敷にての診察でよろしいか?」
「勿論だ、完全警護の上で診察してもらおう。」
俺は装甲車に乗ったままスコール公爵邸に向かう。
そして、屋敷の庭に治療所を展開、
王妹ユリスを待つことになる。
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