第7話 公爵の信頼

到着してすぐに診察となる。

俺は医療用トラックを呼び出し、医療所を展開する。

「これは・・・」

何もないところに現れた医療所にアレクは固まっている。

すると、侍女とサリナに付き添われ、奥様とお嬢様が連れてこられた。

「ヨシノブ殿、これが妻のフランと娘のフレデリカだ。」

「初めまして、治療に来たヨシノブと申します。

まずは診察を行いましょう。さあ、中へ」

俺は挨拶もそこそこに二人を診察室に入れる、そして、診察をした結果、二人とも結核になっていた。

俺は薬を渡し、半年間飲み続ける事を説明する。

二人は半信半疑のようだが、子爵令嬢のサリナに話を聞き、飲んでみることを約束してくれた。


数日後、二人は症状がおさまってきた事に御礼を言ってくる。

「まだ、治った訳ではありませんから、必ず薬を飲んでください。

飲まなかった場合、治せなくなるかも知れません。」

少しきつく言うが二人は約束してくれる。


「ありがとう、妻と娘の苦しい顔をみないですむようになるとは。」

アレクは涙目になりつつ御礼を述べる。


「ええ、御家族の苦しむ顔などみたいものはいませんからね。お力になれたようで何よりです。」


「それで、予防の話だが、この屋敷にいるもの全てにしてもらえぬか?」

「かまいませんが、検証しなくてよろしいのですか?」

「今さらヨシノブ殿を疑ったりはせん。

まずは私からしてくれ。」

これはアレクなりの最大の信用を持つとのことをアピールしていた。

以後、ヨシノブを疑う者がいるならアレクが後ろ楯になるつもりでもあった。


そして、屋敷中の人が予防接種を受ける。

当主のアレクが受けた以上、拒絶の選択は誰も無かった。

「アレク様、信じていただき感謝します。」


「いや、妻と娘を助けて貰い、疑う必要はないであろう。

さあ、これが報酬である、おさめてくれないか。」

アレクは大きな袋に金貨を一杯詰めて渡そうとする。

「こんなにいりません、私はこれぐらいで良いです。あとは領民の人の助けになるように使ってください。」

俺は袋から片手で握れる量を取り、残りは返す。


「なんと欲の無い方だ、わかりました。残りは領民の生活向上に使うと約束しよう。


それで、どうであろう、王都にて他の者達も助けて貰う事は出来ぬか?」


「構いませんよ、多くの人を助ける事が私の利益にもなりますからね。」


「ヨシノブ殿の利益か?金銭では無いな?」

「ええ、金銭より人を助ける事が大事なのです。」

俺はスキルの昇進を狙って人助けを多くしたかっただけなのだが・・・


「おお・・・聖人とはヨシノブ殿の事を言うのであろう。

わかりました。当家の全力をあげヨシノブ殿を支えましょう。」

アレクは感動して協力を申し出る。


「聖人なんてそんな事は無いですよ。

私は私のしたいようにしてるだけですから!」

俺は聖人呼びを避けようとするが、アレクが止める事は無かった。


そして、アレクと共に王都に向かっていた。

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