第14話 アナザーストーリー 桜井先生の視点、婚約解消

 私こと桜井結菜さくらいゆいなは、学生の時から婚約している男性がいた。

 名前は上地洋介かみじようすけという。 

 研修医になると忙しくなるので、学生のうちに早めに婚約をした。学生結婚する人も多い。

 洋介は真面目を絵に描いたような人で、周りが遊んでいても洋介は真面目に勉強をしていた。

 婚約して10年。いつまで経っても結婚はしない私と洋介。私には、ある気があった。外を歩いていると、綺麗な女性に振り向く。女性芸能人が好きで、男性芸能人には興味がない。

 洋介は穏やかだが、察しがいいので気づいていたのかもしれない。

 

 しかし、週末は今まで洋介と過ごしていたのに、小林さんとツーリングに行き始めたため、洋介に会う回数は激減していた。

 それを心配した小林さんに気にしないで、大丈夫という度に、私は自分の置かれている境遇を変えないといけないと思った。修羅場になるかもしれないけれども。


 晩秋のとある日。小林さんとツーリングした後で、私は洋介を喫茶店に呼び出した。日はとっぷりと暮れていた。

 

 私と洋介は店内で対面でテーブルを囲い、座った。


 「大事な話があるのよ。」


 「何だ。」


 「今までの私を見ていればわかるでしょう。私はもうあなたを愛せないの。私は...。」


 「もういいんだ、結菜。わかっているから泣くな。」


 私の頬を涙が伝っていた。


 「もう、言わなくていいんだ。僕の方こそ、知っていて縛りつけていたんだ。」


 洋介と最後の口づけを交わし、私と洋介は婚約を解消した。肩の荷が下りた。


 そして、小林さんを家にあげる事も出来るようになった。


 

 

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