柚子の過去〜柚子
俺の過去、それはあまりいいものとはいえない。人によってはまだマシだろって人もいるだろう。母と親父この2人の過去と相まって歪なものになってしまっている。
俺は正真正銘親父と母の子だった。それでも母は俺に優しくなかった。理由はわかっていた。
俺が女だからだ。
母は男が欲しかった。1人しか産む気がなく、その1人を跡継ぎにしたかったらしい。親父は跡継ぎがいなくてもいいという人だったが、母は跡継ぎがいないとダメ。そういう人だった。
俺は物心着く時から、自分のことは『俺』、話口調も男と同じように話すように教えられていた。着る服は、全部男の子が着るような服。1度だけスカートを着てしまった時に怒った母は怖かった。
小学校では女の俺が男の子のようだから、それでいじめられた。
小学3年の時に母はいなくなったが、俺のこの男のような話し方や俺というのは、直せなかった。
一時期は『私』と言っていた時期もあった。でもそれは自分が自分じゃない気がして気持ち悪かった。
俺は自分が女の子のような服を着るのもダメになっていた。親父に襲われた時、力で負けて自分が女ということを思い知らされて、何度も死のうとした。こんなの自分じゃない、なんでこんな姿なのか。分からなかった。力も弱い、胸も出てきている。しかも今もうひとつの女という印に苦しんでいる。
それは月に1回やってくる。俺は男だ。今はその気持ちが弱くなっている気がする。
愛に出会って、男に産まれたかった。その気持ちが強くなった。でも今までみたいに俺は男だ。そう思う度に、男だったらなと言う気持ちも出てきて苦しむ。
それを解決するのは簡単だった。愛への好きの気持ちを抑えればいい。出さなきゃいい。
だから、愛への気持ちに蓋をした。そして俺は、俺が女だということを少しずつ受け入れた。
その結果。俺は、愛と同じ高校に行けるようになった。
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